徳島のスペイン人監督が追及するポゼッションサッカーは日の目を見るのか?

2019年03月08日 柏原敏

キャンプから多くの時間をビルドアップに費やしてきた

3年目を迎えたR・ロドリゲス監督は、今シーズンもつなぐスタイルにこだわるつもりだ。写真:徳原隆元

 今季のプレシーズンでリカルド・ロドリゲス監督が真っ先に手掛けたトレーニングは何だったかご存じだろうか? それは、ビルドアップ。高知県、宮崎県と約1週間ずつキャンプをしたが「ビルドアップでしっかりと突破できなければ効果的な攻撃の場面までは持ち込めない」(同監督)として、その成熟に徹底して時間を費やした。"真っ先に手掛けたトレーニング"と前述したが、真っ先というよりも多くの時間をビルドアップに費やしてきたと言える。その重要性については「疑いがない」(同監督)。
 
 では、その内容とは。チームによってビルドアップにも様々な方法論があるが、徳島の主たるものは"数的優位&サイドからサイド"。ボール保持率を高めながら試合毎に見極めたスカウティングをベースに数的優位を作り出せるエリアを研究して敵陣に侵入。また、そこから横幅を活かしてサイドからサイドに動かし、意図的に生み出したスペースで今度は1対1で勝負させる。いわゆる個の力を最大限に発揮させ、質的優位性で決定機創出につなげていく。
 
 そして、R・ロドリゲス監督が「全員でボールを持って進んでいくこと」と表現をするように、コンパクトに適切な距離感を保ちながら攻撃を仕掛けることで、ボールロストした後も切り替えの反応さえ意思統一できていれば守備時でも瞬時に数的優位を作り出せる。結果的にボール回収率が高まり、攻撃時間が続いて好機創出とCK獲得の回数がジワジワと増えていく。「攻撃と守備を別で考えることはできない」(R・ロドリゲス監督)。そう言葉にする回数が多いのは、すべてに意図があるからだ。
 

 しかしながら、そのロジックを基に完成形を持って開幕を迎えられているかというと、まだまだ発展途上である。前述の取り組みは、今季始めた内容ではなく、R・ロドリゲス監督が17年の就任以来ずっとテーマにしてきたことでもあるのだが、3年目となったいまも、ロジックの浸透はできていてもピッチで表現することは容易でない。

 なぜなら、そこは個の技術が問われる要素も大きいからだ。攻撃のスタートは自陣。ポジションで言えば、GKとDF。特にDFに関しては、CBがその鍵を握るが、徳島の最終ラインはまだまだ成長過程にある。
 
 現在は2節を終えて1勝1敗、総得点4と相応の成績。また、シュート28本、CK20本と攻撃の形は数字としても表れつつある。だが、同時にビルドアップ時の致命的なミスから招く失点やピンチが続いているのも事実。発展途上のビルドアップがどう進化していくのか。徳島が上位進出するための第1のカギは、そこにある。

取材・文●柏原敏(フリーライター)
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