【スペシャル対談】村井満Jリーグチェアマン×セルジオ越後 Jリーグの発展に必要なビジョンとは[後編]

2014年09月18日 週刊サッカーダイジェスト編集部

「健全経営は重要なテーマ。その前提の上でビッグクラブづくりを奨励していきたい」(村井満チェアマン)

健全経営を前提に、魅力ある選手を獲得にしようとするチャレンジはリーグとしても後押しする方向だ。C大阪のフォルラン獲得のプロセスは、Jリーグ内で共有されているという。(C) SOCCER DIGEST

 Jリーグの村井チェアマンと、サッカー解説者のセルジオ越後氏によるスペシャル対談の後編の主な話題は、Jリーグ、Jクラブの経営面について。前編では、親会社の景気に左右されるJクラブの経営構造に疑問を投げかけるセルジオ越後氏が、Jリーグは真の地域密着を果たせていないと主張。一方、村井チェアマンは企業の動向に左右されない運営基盤づくりの必要性は認めながらも、地域型クラブとして成長路線を歩むクラブが生まれ、Jクラブ全体で年4000回を誇るホームタウン活動の実績から地域に根差した経営努力も着実に行なわれていると反論。対談は、さらに魅力あるリーグづくりの核心へと迫る――。
 
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越後 でも、プロとして一番大切なのはホームタウン活動に力を入れることではないでしょう。それだって、本来の目的は収入を増やすためのひとつの手段。地元の人にサッカーに興味を持ってもらい、いかに会員を増やせるか。いろいろなアイデアを出して、面白い活動をしているクラブもあるけど、ギブアンドテイクの関係として形になっているクラブは見当たらないですね。
 
 結局、「企業スポーツ」から抜け切れていないJリーグのクラブは、そうした意識がもともと希薄だと思う。例えば今年の開幕前は、フォルランがセレッソに加入して話題を提供した。その舞台裏についてはいろいろ話を聞いているけど、他のクラブが真似る動きはありませんね。
 
村井 地域と共に成長していくことを基本理念としているJリーグにとってホームタウン活動は極めて重要です。一方で、プロの興行の側面で選手への投資も重要です。今度、理事会でフォルラン選手の獲得の背景がどういうものだったか、どんなプロセスを踏み、そろばんを弾き、実際にどういう結果を得られたのかという話をしてもらうんですが、すでに他のクラブも規模こそ違いますが、ウチはウチなりに頑張ろうという機運は高まっています。
 
 例えば札幌は小野選手を獲得しました。あの予算規模で小野選手を獲るのは大きな決断だったでしょうし、J3の鳥取がフェルナンジーニョを獲ったのも小さなクラブにとっては大きな勝負でしたが、昨日のJ3で(8月24日の盛岡戦/1-0で勝利)、土砂降りの雨の中で5000人が傘を差しながら観て、みんな帰らなかった。やっぱりセルジオさんが仰るように、プロの興行ですから千両役者を見たいし、クラブが規模に応じたビッグネームを連れて来る努力はしています。
 
越後 それにしてもセレッソは、せっかくフォルランを獲ったのに、なぜ柿谷を出してしまったんですかね。興行的に「1+1=2」にできるのに、「1-1=0」にしてしまった。これもエージェントの影響が大きいのだろうけど、僕はセレッソが柿谷を出した瞬間に本当にガッカリした。フォルランを獲りに行ったのはプロとして正しい選択だと思うけど、結局は予算社会の枠組みの中で動いているのかと。
 
村井 私はセレッソの移籍に関する詳しい事情は把握していませんが、実際に今は各クラブがJリーグクラブライセンス制度の下で運営をしており、最後に赤字が出ないように収支を整えているという側面はあります。ドイツを例に出すまでもなく、各クラブは「企業経営」をしているわけですから、健全経営、ファイナンシャル・フェアプレーは極めて重要なテーマです。ただ、その前提の上でビッグクラブを作っていくことをリーグとして奨励していくべきだと思っています。

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