開幕3試合で何が見えた? 【バルセロナ】のスタートを番記者が診断

2014年09月17日 ルイス・マルティン

ウイングは「外」から「中」へと仕事場を変えた。

3連勝と好スタートを切ったバルサ。L・エンリケの改革は順調に進んでいるようだ。 (C) Getty Images

 失ったものを取り戻すには、たった3試合で十分だった。
 
 前監督のタタ・マルティーノは戦術面に無関心で、時に卑屈になり、チームは無冠で昨シーズンを終えた。
 
 現場の刷新は物事を大きく変えようとしている。昨シーズンのスタッフから残ったのは、メディカルチームのふたりだけ。空気はリフレッシュされ、今ではベンチに本当に必要な監督がいる。強いパーソナリティーを持ち、自信に満ち溢れたルイス・エンリケだ。
 
[考察]
ウイングを殺したL・エンリケ流の新戦術
 
 戦術面で非常に興味深いのは、ウイングの役割の変化だ。L・エンリケは、バルサが伝統としてきたメソッドに変更を加えた。ウイングはもはやサイドラインを踏むことはなく、彼らは「外」から「中」へと仕事場を移した。
 
 ヨハン・クライフの時代から、チームには必ずサイドのスペースを利用するウイングがいた。しかし、今シーズンのウイング――ここまでは主にペドロ・ロドリゲスとムニル・エル・ハッダディ――は、サイドに張り出すことはなく、むしろ中へ絞り、リオネル・メッシと近い距離を保ちながらプレーしている(編集部・注/故障明けのネイマールはここまで2試合でベンチスタート。ルイス・スアレスは例の噛みつき事件の処分で出場停止中)。
 
 もちろん、L・エンリケはサイド攻撃を捨てたわけではない。サイドのスペースを活用する選手を変えただけだ。それを担うのは、インテリオール(インサイドハーフ)とサイドバックだ。右サイドはイバン・ラキティッチとダニエウ・アウベス、左サイドはアンドレス・イニエスタとジョルディ・アルバ。ペドロとムニルは中に絞り、相手を中央に惹き付ける。その空いたスペースに、それぞれこの4人が飛び込んでいく。
 
 新戦術の効果は上々だ。リーガ・エスパニョーラが開幕して3試合、相手のピボーテ、センターバック、サイドバックは混乱に陥っている。どうしてもサイドでのマークがずれてしまうからだ。
 
「相手を驚かせたい。予測されるような動きはしない」とはL・エンリケの言葉だ。
 
 L・エンリケはウイングを殺した。それもサイド攻撃を捨てることなく、だ。新たなプロジェクトは、高いレベルで機能しつつある。
 
【記者】
Luis MARTIN|El Pais
ルイス・マルティン/エル・パイス
スペインの一般紙『エル・パイス』のバルセロナ番とスペイン代表番を務めるエース記者。バルサの御用新聞とも言えるスポーツ紙『スポルト』の出身で、シャビ、V・バルデス、ピケらと親交が厚く、グアルディオラ(現バイエルン監督)は20年来の親友だ。
【翻訳】
豊福晋
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