【“元”担当コラム|松本】“ツンデレ”ソリさんが率いる山雅は、必ず下馬評を覆すはず!

2019年03月03日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「元気か?」と右手を差し伸べて――

眼光鋭い反町監督。強面だが、人情味溢れる人間であるのは誰もが知るところだ。写真:徳原隆元

 2012年のJ2初参戦から、正式に松本の担当となった。つまりは、反町康治体制となってからの濃密な時期を取材できたわけだが、今季、愛着あるクラブの担当をついに離れることになった。

 お世話になったソリさんへの挨拶は、開幕戦を終えた後になってしまった。2月某日、練習場のかりがねサッカー場へ足を運ぶ。トレーニングが始まる前、ミーティングを終えたソリさんがピッチへと向かってくる。これはチャンス。タイミングを見て声をかけると、値段の張りそうなメガネをキラリと光らせたソリさんは、眼光鋭く「おう」と応じる。
 
 こわ……。
 
 正直に言えば、もう少し"久しぶりだな!"的な感じになるかと思ったが、空振りに終わった。そりゃそうだ。これから大事な練習が控えている。担当期間が長いだけで、たいして取材に来ない記者など……と、うなだれていたら。
 
「元気か?」
 
 振り向くと、満面の笑みを浮かべたソリさんが右手を差し出してくれている。
 
 このツンデレ感がたまらない。このギャップについつい引き込まれる。強面だけど、義理人情に厚い人なのだ。「後ほど、ちゃんとご挨拶を」と伝えて、その場は握手だけさせてもらった。
 
 練習後には、1-1のドローに終わった磐田との開幕戦についても訊いた。勝ち切れなかったが、攻撃ではシュートで終わるシーンが少なくなかったし、上々のスタートだったのではないかと投げかけたが、ばっさりと切り捨てられた。
 
「いや、そうかな、どうかな。形的にはカウンターだったし、自分たちで能動的に崩しているかというと、そうでもない。まだまだだよ。
 
 相手が陣形を崩してまで攻めてきてくれたから、当然、こちらが奪った時にはスペースがたくさんある。それで、我々がよく見えただけ。根本的に問題が解決されたわけでもない。
 
 結局、フィニッシュで終えることができても、枠にいくかいかないかの問題もあるでしょ。それはどこのクラブでも抱えている問題かもしれないけど、我々はもっともっとやらないといけないよ」
 
 でも、今後につながる内容だったのでは? と食い下がってみたが、返り討ちにあった。
 
「そんなの、前のJ1の時だってそうだったろ、名古屋戦(3-3の引き分け)が終わった後に、そういう見立てはあったかもしれないけど、その後に勝てたかといえば、勝っていないんだから」
 
 要は、磐田戦の内容で満足など1ミリもできない、これまで以上に危機感を持って戦わなければいけないんだと、ソリさんはそう考えているのだろう。「チームとして、同じ方向を向けるようにやっていくことが必要だ」とも言っていた。
 
 それから数日後、チームはアウェーの大分戦で今季初勝利を掴む。1-0。永井龍が決めた虎の子の1点を守り切った。
 
 フィニッシュの課題はまだ残されているが、崩しの局面では能動的なアクションがいくつかあった。技術的に上回る大分を相手に、文字通り、チーム一丸となって失点を許さなかったのは、まさに"同じ方向を向いて"戦えていたからだろう。
 
 今、この瞬間もソリさんはサッカー漬けの日々を送っているはず。妥協も、慢心も、しない。チームが勝つために、できることすべてを準備する。大分戦後、「我々はJ1のなかで、多分一番激しく苦しく、しんどい練習をしてきたところがある」とコメントしていた。サッカーダイジェスト本誌の順位予想では最下位だったが(ゴメンナサイ)、今季の"反町山雅"は、必ずや下馬評を覆す戦いを見せてくれるはずだ。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
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