【大宮】「悲願成就」のキーマンになるか?酸いも甘いも噛み分けた渡部大輔の新たな挑戦

2019年03月02日 松澤明美

ウイングバックでの起用に「チャンスではシュートを打っていきたい」と意欲十分

在籍12年目を迎える渡部は、高木監督が採用する新システムのキーマンのひとりだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 大宮一筋プロ12年目の渡部大輔。チームの酸いも甘いも噛み分けた生え抜きの29歳が、今季から指揮を執る高木琢也監督の代名詞3−4−2−1システムの右ウイングバックに挑戦している。昨季まではチーム伝統の4−4−2で右サイドバックを務めていたが、一列前に上がってゴールが近くなった。「攻撃の比重が上がった。新鮮ですし、どんどんチャレンジしたい」と新たな試みを楽しんでいる。
 
 大宮の下部組織時代はFWで活躍し、2007年のJユースカップでは得点王に輝くなど攻撃的な選手だった。高木監督の抜擢もうなずけ、本人も「ゴールに絡むシーンが必然的に多くなる。チャンスではシュートを打っていきたい」と、かつての血を騒がせる。攻撃に守備にとハードワークが必須のポジションで「運動量が求められる」と自覚。より一層に意識してトレーニングに励む姿が印象的だ。
 
 昨季は怪我に泣かされた。開幕戦から5試合連続でスタメンを張ったものの、4月14日の9節・岡山戦で右足関節部内果骨折した。順調なシーズンスタートが全治約3か月の診断で一転。治療とリハビリに時間を費やすことになった。メンバーに復帰できたのは8月12日の28節・愛媛戦で、リーグはすでに佳境に入っていた。

 思わぬ故障離脱でチームに貢献できず、1年でのJ1復帰も叶わなかった。今季は同じ気持ちを味わうつもりはない。「悔しい思いをしたので、絶対に(J1に)上がれるように全員で同じ目標を持ってやりたい」と有言実行を誓う。ベテランの域にも差し掛かり、また、在籍年数の長さは金澤慎に続いてチーム2番目。背負う責任は大きくなり、「チームの力になれればいい」と率先して引っ張る意気込みだ。
 
「やりたいことがある程度チームで共有でき、完成度が上がっている」と臨んだ今季の開幕戦は先発で出場し、80分に退くまで積極的に攻撃参加した。スコアレスドローに終わったが渡部にも、チームがトライする新システムにも、今後の飛躍への可能性を感じた。昨季は10節までで3勝2分5敗で15位だっただけに「出足でつまずいた。最初からずっと上位でやらなきゃいけない」と反省を糧にする。
 
 端々で見せる表情も、男らしさが増した。今年、三十路を迎える背番号13のチーム愛と生え抜きのプライドが上昇のキーとなりそうだ。
 
取材・文●松澤明美(サッカーライター)
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