前評判が高かった清水の現状は?新システムを採用した開幕戦の出来を徹底検証

2019年02月25日 前島芳雄

30分の先制点の場面では、前の3人が見事な連係を見せた

新戦力の中村は2シャドーの一角でノビノビとプレー。持ち味のドリブルで攻撃にアクセントをつけた。写真:川本学

【J1リーグ1節】広島1-1清水/2月23日(土)/Eスタ
 
 アウェーでの開幕戦は1-1のドローに終わった清水。昨季2位の広島の本拠地で、エースの北川航也が良い形で先制点を奪ったこと、3-4-2-1の新システムでの初戦で守備が大崩れしなかったことを考えると、悪くない結果だったと言えるだろう。
 
 ただ、シュート数が5本:14本と大きく差をつけられ、押し込まれて苦しむ時間が多かったのも事実。「勝点1を取れただけ」(河井陽介)という声もある中で、どんな成果や課題が見えたのか、新システムの手応えを中心に振り返ってみたい。
 
 まず攻撃に関しては、1トップ2シャドーというのは、昨年にヤン・ヨンソン監督が就任してから初めての形。1トップが北川で、金子翔太が右シャドー、新加入の中村慶太が左シャドーを務めた。その中で中村は、長崎でこの形に慣れているので、清水での初の公式戦とは思えないほどノビノビと持ち味のドリブルを効果的に繰り出し、攻撃にアクセントを加えていた。本人も「楽しく、迷いなくプレーできた」と言う。
 

 また30分の先制点の場面では、前の3人が見事な連係を見せ、最近「シュートは7割(の力で)」とよく言っている北川も、その言葉通りGKの動きを見ながら左足で冷静に右ポスト際に決めた。以上の2要素は、チームにとって大きな収穫と言える。
 
 ただ、北川は1トップにまだ不慣れで、金子は気が利く選手である分、守備から攻撃まで多くのことをやろうとしすぎて逆に良さを出し切れていない印象もあった。そのあたりは、もう少し整理や慣れが必要だろう。
 
 前線からの守備に関しては、前の3人で積極的にプレッシャーをかけていくという姿勢も見せたが、プレスを外された時に「ボランチの脇が空いてしまう」(金子)という一面もあり、そのスペースを広島に使われたシーンも目立った。金子は「今回は前から行って意図的にボールが取れたシーンもあったけど、行く時と行かない時の使い分けも大事ですね」とも振り返る。
 
 そのあたりは3バックの課題とも絡んでいる。右からヴァンデルソン、立田悠悟、ファン・ソッコと並ぶ3バックは、高さも含めた対人プレーでリーグ屈指の強さを発揮し、そのポテンシャルの片鱗は開幕戦でも十分に見えた。ただ、広島の1トップを3人で見るのは効率が悪く、「後ろの3人がもう少し前に出ていく押し出しがあっても良かった」とヤン・ヨンソン監督は課題を口にする。立田も「3バックの1枚が前に行っても周りがカバーできるので、そこはビビらずにもっとアタックしたほうがいいという話をしています」と語る。ボランチ脇のスペースを相手に使われないようにするには、3バックの積極的なチャレンジとカバーという面も課題となってくる。
 

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