アジア王者撃破の舞台裏――6年ぶりのJ1で、大分は敵地カシマでいかに戦ったのか?

2019年02月24日 柚野真也

「1点目を取って落ち着き、良さが出た」

鹿島を相手に2ゴールを叩き出した藤本。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ1節]鹿島1-2大分/2月23日/カシマ
 
「僕、負けたことがないので」。4年前に就任してから開幕戦で負けたことのない片野坂トリニータが、アウェーでアジア王者・鹿島に金星。6年ぶりのJでも最高のスタートを切った。
 
 J3から指揮する片野坂知宏監督は、今季も攻撃的なスタイルを積み上げてきた。大分と言えば、GKを含めた後方からのビルドアップで攻撃を組み立て、相手のほころびを突いていく。丁寧なパス回しを軸に大きな展開も織り交ぜて、相手ゴール前では複数の選手がボールに迫る。大事な開幕戦、しかも鹿島相手にスタイルを変えてくるのか注目されたが、指揮官は果敢に勝負を挑んだ。
 
 開幕戦の先発は、高山薫以外はほとんどJ1経験のない選手たち。独特な緊張感が漂う開幕戦の雰囲気のなか、少しナーバスになった。片野坂監督は「鹿島のJ1最高レベルのプレスの圧を感じた」。最終ラインでのボール回しにスムーズさを欠いたが、「ボールを動かし、(プレスを)剥がしてチャンスを作りたかった」とミスを臆することなく、パスをつないだ。
 
 それが見事に先制点に結びついた。最終ラインでのつなぎから、福森直也のフィードはクリアされたもののセカンドボールを「ゴールまでのイメージが共有できていた」という前田凌佑が拾い、新加入の伊藤涼太郎にパスを通す。伊藤からのワンタッチパスを同じく新加入の小塚和季がダイレクトでつなぎ、最後は藤本憲明がフィニッシュ。昨季の主力と新戦力が見事に融合したコンビネーションで崩したゴールは、今年も大分の大きな武器になるだろう。
 
 指揮官の言葉を借りれば、「1点目をとって落ち着き、良さが出た」。選手がスピードに慣れ、スペースが見えてきた。ポゼッション率を高め、後ろから攻撃を組み立て、ピッチの幅を使う得意の形でボールを動かした。サイドの使い方もクロスや突破を重視するのではなく、起点作りを優先した。
 
 後半は球離れが遅く、ポジションを上げて攻めにかかる鹿島の圧力に屈し、セカンドボールが拾えない時間が続いた。後半早々にセットプレーから失点し、嫌な流れとなったが片野坂監督は冷静だった。
 

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