クエンカ欠場に不慣れなフォーメーションも…思わぬ大敗も鳥栖のチャレンジは続く

2019年02月24日 荒木英喜

昨季までの統率の取れたプレスでボールを奪うシーンは見られず

開幕戦は4失点で黒星を喫した鳥栖。次節以降に巻き返しを見せたい。写真:徳原隆元

[J1リーグ1節]鳥栖0-4名古屋/2月23日/駅スタ
 
 0-4。名古屋相手に、試合前には予想もしていなかった大敗を喫した鳥栖。いや、むしろ期待の方が大きかった。ルイス・カレーラス監督を迎え、ハードワークをして泥臭く守って、少ないチャンスをものにして勝ち切るというサッカーから脱却し、パスワークとコンビネーションという新たなスタイルに挑戦していたからだ。
 
 しかも、2シーズン目を迎えるフェルナンド・トーレスと金崎夢生のコンビは連係が深まり、そこにFCバルセロナなどで活躍したイサック・クエンカを新たな戦力として迎え、前線はこれまで以上に豪華になった。プレシーズンの練習試合などでは7試合で13ゴールを挙げ、昨季リーグ最少得点に終わった決定力不足も解消されたかに思われた。

 しかし、その期待は開幕戦に限ってみれば、脆くも崩れ去った。パスワークを駆使したコンビネーションサッカーの片鱗さえ見せられず、ゴールもなし。それだけでなく、自慢の守備はボールの追い込み方、取りどころがはっきりせず、ただ来たボールに対して個々で対応するだけ。鳥栖らしい統率の取れたプレスでボールを奪い、素早い攻撃につなげるというシーンはほとんどなかった。

 その要因のひとつがクエンカの欠場だろう。カレーラス監督はクエンカ欠場の理由を明確に答えなかったが、サイドからの攻撃を重視した今季の鳥栖でクエンカはそのキーマンだった。彼がいなくてもパスサッカーを貫くことができれば良かったかもしれない。しかし、高橋祐治が「つなぐより相手の裏にスペースがあったのでそこを狙っていた」というように前線へのロングボールが増えたことで、キャンプなどで培ってきたパスサッカーは影を潜めた。
 
 カレーラス監督は「クエンカがプレーしていたとしても、今日のような配置はとっていたと思います」と、3バックを採用。しかし、このフォーメーションで実戦に臨んだのは、先週行なった福岡との練習試合の後半が初めてだった。ジョーを中心とした強力な名古屋の攻撃陣に対応するためだったが、不慣れなフォーメーションだったこともあり、結果的には機能せずに4失点と破綻してしまった。
 
 1万8000人以上が集ったサポーターに、新たな鳥栖のサッカーを見せられなかった。ただ期待は大きいものの、新たなスタイルが容易に浸透すると考える向きは少ないだろう。
 
「今は顔を上げて、前を向いてしっかりトレーニングして次に向かうことです」(カレーラス監督)
「自分たちはこれから良くなっていくだけ」(トーレス)
 今は取り組んでいるサッカーを信じ、誰がピッチに立ってもそのサッカーを表現できるように理解を深めていくことが重要だ。そのためのチャレンジを鳥栖は続けていく。

取材・文●荒木英喜(フリーライター)
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