ゼロックス杯で浦和を圧倒。川崎のスタイルを「パスサッカー」のひと言で括るべきではない

2019年02月16日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

それでも「川崎、強し」を強調すべきではない

ゼロックス・スーパーカップを制した川崎。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[富士ゼロックス・スーパーカップ]川崎 1-0 浦和/2月16日/埼玉スタジアム2002
 
 Jリーグ王者の川崎が、1-0というスコア以上に内容で天皇杯覇者の浦和を圧倒した。守備的な入り方をした浦和をそれでも攻略し、新戦力レアンドロ・ダミアンの決勝ゴールで勝ち切った戦いぶりからは貫禄さえ感じられた。
 
 今の川崎のスタイルを「パスサッカー」のひと言では括れない。それは昨季のリーグ最多得点&最少失点が示すように、単に華麗な攻撃を仕掛けるチームではないのだ。
 
 事実、この日の川崎は浦和をわずかシュート1本に抑えている。特筆すべきはボールを奪われたあとのリスクマネジメントの上手さで、川崎がカウンターを食らう場面は皆無に等しかった。浦和の柏木陽介が「自分が下手だなと思うくらい何もできなかった」と語っている点からは、川崎の守備力の高さが窺える。
 
「空を使えばいい。空中には(DFが)いないので」という中村のコメントからは、川崎がつなぎに固執していない事実が浮かび上がるだろう。「空を使えばいい」というのはL・ダミアンの高さを生かした攻撃を指しており、それが効果的なら細かいパスワークに固執せず、シンプルにその武器を有効活用したほうがいいというのが中村の見解だと捉えている。
 
 川崎は単なる攻撃的なチームではないだろう。昨季のリーグ最多得点&最少失点という観点からすれば、攻撃的でもない守備的でもない、最良のバランスを維持しているチームということになる。今回の浦和戦も攻め倒したというよりは、手堅く勝ち切った印象が強い。1-0とリードした52分以降はむしろディフェンスの上手さが光り、実際、浦和に決定機らしい決定機を与えなかった。
 
 とはいえ、ゼロックス・スーパーカップを制したからといって「川崎強し」を強調するのは避けたい。この1試合の結果を受けリーグ戦の行方を占うなら、それはおそらくナンセンスだろう。
 
 昨季のゼロックス・スーパーカップを思い出してもらいたい。C大阪を相手に低調なパフォーマンスに終始し、2-3で敗れた川崎がその流れを引きずるどころか、最終的にはリーグチャンピオンに輝いているのである。リーグ戦の行方を占ううえでゼロックス・スーパーカップの結果をそこまで鵜呑みにすべきではないということは、誰あろう、川崎が証明しているとも言えるのだ。
 
 この日活躍した川崎のL・ダミアンやマギーニョらがJ1リーグでも同じように活躍できるかはまた別の話である。ゼロックス・スーパーカップの結果はあくまでゼロックス・スーパーカップの結果。来週開幕するリーグ戦とは切り離して考えるべきだ。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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