【現地発】デヨングを獲得したバルサ、“収支のバランス”を保つため売却候補に挙がる2選手とは…

2019年02月10日 エル・パイス紙

デヨング獲得は未来に向かって進むためのメッセージ。

今年7月のバルサ入団が決まっているデヨング。バルサにとって彼の獲得は、極めて重要なミッションだった。(C)Getty Images

 フレンキー・デヨングの獲得は、バルセロナにとって極めて重要な案件であった。

 現在のバルサは、ジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケッツ、リオネル・メッシ、ルイス・スアレスと、黄金時代を支えてきた主力が軒並み30歳を超え、主力の高齢化が進んでいる。また、バルサ・スタイルのイデオロギーを成す中盤において、シャビとともに牽引役を担っていたアンドレス・イニエスタが昨年5月に退団。その後を継ぐ選手をクラブは探していた。

 とはいえ近年、有望選手の流出が続いているカンテラには目ぼしいタレントが現われず、かといって外部から求めようにも、資金力に限界があるため補強戦線で苦戦を強いられていた。

 そんななかでバルサは、パリ・サンジェルマン、マンチェスター・シティといった金満クラブとの争奪戦を制し、ヨハン・クライフ、あるいはジョゼップ・グアルディオラが完成に尽力したサッカーの、申し子になれる器を持ったデヨングの獲得に成功した。これによってバルサは、未来に向かって力強く進むためのインパクト抜群のメッセージを内外に発した格好だ。
 
 バルサのレジェンドで、現オランダ代表監督でもあるロナウド・クーマンは、デヨングについて称賛を惜しまない。

「ボールタッチ、ゲームビジョン、判断力のいずれも優れている。オランダ代表のキーマンだよ。中盤の3つのポジションならどこでもプレーできる柔軟性も魅力だ。プレスをかいくぐりながらボールをキープするのも実に上手い。ラストパス、シュート、飛び出しのタイミングなど改善の余地はあるが、素晴らしいプレーヤーだ」

 デヨング獲得につぎ込んだ資金(7500万ユーロ+ボーナス1100万ユーロ)を回収し、ファイナンシャルフェアプレーが規定する収支のバランスを図るため、バルサはこの夏、レギュラークラス2選手の売却を検討している。

 なかでも市場人気の高いイバン・ラキティッチは、ポジションも重なり、有力な候補のひとりだ。その一方でアルトゥールとウスマンヌ・デンベレはデヨングとともにバルサの未来を担うべき重要な選手であり、一本立ちが期待されている。

 難しいのはフィリッペ・コウチーニョの扱いだ。1年前の入団以来、なかなか本領を発揮できない現状について、クラブ幹部は懸念を示している。イングランドでの評価は依然として高いため、この状況が続くようなら、あるいは動きがあるかもしれない。契約延長交渉が停滞しているジョルディ・アルバ(契約は2020年6月に満了)については関係者は合意に自信をのぞかせている。

 デヨングの獲得が発表された1月23日は、奇しくも30年前、ホセ・ルイス・ヌニェス元会長によってクーマンの入団会見が行なわれた日であった。

 なにかにつけてバルサ・スタイルへの背信行為を非難されるジョゼップ・マリア・バルトメウ会長と現経営陣だが、その原点であるトータルフットボールの体現者だったクライフの、そしてそのスタイルをひとつの完成形にまで極めたグアルディオラのイズムを引き継ぐことができる逸材の獲得に成功した。

 バルサにとってデヨングの加入は、それだけ大きく、そして重要な意味を持っている。

文●ジョルディ・キシャーノ、ラモン・ベサ(ともにエル・パイス紙・バルサ番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
 
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