「あの失点で精神的にきてしまった…」イランの智将ケイロスが見た日本戦の勝負の分かれ目は?|アジア杯

2019年01月29日 サッカーダイジェストWeb編集部

名歌になぞらえて表現したイラン・サッカー界への想い

前半に圧倒的優位に立ちながらも日本に完敗を喫したイラン。彼らはなぜ敗れたのか? 智将ケイロスがその勝負の分け目を語った。 (C) Getty Images

 現地時間1月28日、UAEのハッザ・ビン・ザイードスタジアムで、アジアカップの準決勝が行なわれ、日本代表がイラン代表を3-0で下した。

 森保ジャパンが8年ぶり史上最多5度目の優勝に王手をかけたのに対し、43年ぶりの戴冠を逃したイランはまさに茫然自失といった感が否めない。今大会はこの試合まで無失点で無敗を維持。アジア最強とも言われたなかで、3発を食らって完敗を喫したからだ。

 無論、試合後の記者会見に臨んだ指揮官カルロス・ケイロスの声も落ち気味だ。

 幾多の勝負の場で采配を振るってきた辣腕は、「この試合について話すことはあまり多くはない」としつつも、試合の流れを変えた大迫勇也の先制点の場面を振り返った。

 56分のことだった。イランのエリア前で南野拓実が転倒した際にセルフジャッジをしたイランの選手たちが主審に詰め寄って足が止まると、この間に起き上がって左サイドでボールを拾った南野がクロスを供給。これを大迫がヘディングで決めた。

 このシーンが勝負を分けたとケイロスは強調した。
 

「異なったスタイルを持ったチームによる非常に拮抗した準決勝だったと思う。ある一つのことが起こるまではね……。我々が失点を許した場面で、日本の選手はシミュレーションでファウルを貰おうとしていた。それを見て、私の選手たちはプレーを止めてしまったんだ。主審がそれに反応してくれると思ってしまったからだ。あの失点でチームは精神的に参ってしまった。その後、ピッチには一つのチームしかいなかった。それが日本だったんだ」

 この回答に記者から「選手が精神的にきてしまった後、あなたは監督として何をしていたのか? 戦術は? 謝るべきではないのか?」と厳しい質問が飛んだ。すると、ケイロスは次のように反論した。

「私の役割はピッチで起こったことの全ての責任を取ることにある。だが、あなたは何をした? 私はピッチに立っていたが、あなたは黙って見ていただけじゃないのか!?」

 持論を展開し終えた後、「ベストなチームが勝って決勝に行くという話だ。日本にはおめでとうと言いたい」とも語った65歳のベテラン監督は、実はこのアジアカップ終了後にイラン代表との契約満了となるため、2011年から約8年間も続いた長期政権に終止符を打つことが決定的となっている。

 ゆえに会見でも、「あなたの今後は?」との質問が飛んだ。これに対して、ケイロスはイラン・サッカー界への感謝の念と別れの言葉を名歌になぞらえて表現した。

「私の選手たちとの冒険はとても素晴らしいものだった。ただ、フランク・シナトラの歌『My Way』にある歌詞を借りて表現するなら、『The end is near(終わりが近づいている)』。つまり、私が指導者として自分の道を進んだということだ。

 ワールドカップで見せたプレーはイランの人々のためのものであり、世界にもイランの別の側面を示すことができたと思っている。この国の選手たちも欧州でプレーする者が増えているし、イラン・サッカーの未来は明るいと思う。とにかく私はイランに感謝したい。ありがとう」

 森保ジャパンに完敗を喫して、イラン代表でのラストマッチを終えることになったケイロス。その最後の言葉には長期政権を築いたからこその熱き思いがこもっていた。

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