正念場のイラン戦に向け、希望になった大迫勇也の「18分間」|アジア杯

2019年01月25日 佐藤俊

ベトナム戦で大迫が出場した時に感じた空気の変化

ポストワークで攻撃を牽引する大迫は、日本の攻撃になくてはならない存在だ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 やはり大迫勇也の存在感は別格だ。
 
 ピッチに入ってくると、チームの雰囲気がガラリと変わる。チームメイトの大迫に対する信頼感から発露する期待感とでもいうのだろうか。
 
 とりわけ前線の選手のプレーが活性化し、動きにキレが増していく感じだ。
 
 武藤嘉紀、北川航也とはタイプが違うので、単純に比較することは難しいが、大迫と彼らの最大の違いは前線でしっかりボールをキープして時間を作ってくれることだろう。
 
 このプレーが今の日本には欠かせないものになっている。
 
 困った時に大迫に出すとキープしてもらえる。ちょっとパスがずれても身体を入れて、ボールを保持してくれる。収めたボールを絶妙のタイミングで出してくれる。そうしてリズムが生まれて、攻撃がスムーズに流れていく。
 
 昨年の親善試合では、そういうシーンが多く見られた。
 
 だが、今大会、大迫不在時は連動した攻撃を実現するのがなかなか難しかった。ベトナム戦にしても堂安から南野に縦にパスがつながってシュートまでいったシーンがあったが、北川と前線の選手が連動して攻撃する、例えばワンツーを決めてボックス内に侵入していくプレーがあまりなかった。初戦のトルクメニスタン戦、大迫が出場していた時は、多少は連動した攻撃が出来ていただけに、その後の試合の迫力に欠ける攻撃を見るにつけ、大迫の存在の大きさを感じずにはいられなかった。
 

 大迫が存在の大きさを示したのは、ロシアW杯だった。
 
 ポストプレーの重要性をドイツで改めて学び、その術をロシアW杯で見せてくれた。「大迫のタメ」が日本代表の戦術ベースになっていたのだ。
 
「自分が前で収めないとチームが機能しない。チームを勝たせるために必要なことですし、そこからさらにペナルティボックスに入って点を取る。仕事は大変ですけど、日本のFWはそれをしないと世界と戦えないのでやり遂げるしかない」
 
 コロンビア戦で決勝ゴールを挙げ、ベスト16進出に貢献した大迫は、W杯での自分の仕事についてそう語っていた。
 
 今大会でもロシアW杯と変わらず、大迫は自分の仕事をやり続けているが、空気を変えるほどの存在感は、なかなか醸し出すことはできない。
 
 ブラジルW杯の時、日本の初戦のコートジボワール戦、62分にディディエ・ドログバが出場してきた。その時、チームの雰囲気がガラリとポジティブなものに変わったのを肌で感じた。1点をリードしていた日本はその2分後に追いつかれ、さらにその2分後にひっくり返されて痛い逆転負けを喰らったのだが、そのドログバ登場の時と同じような空気の変化をベトナム戦で大迫が出場した時に感じたのだ。
 

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