【東京V】禁断のFC東京行きから8年――。河野広貴が打ち明けた古巣復帰の理由と兄貴分としての自覚

2019年01月20日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

「動けるうちにヴェルディに戻りたかった」(河野)

河野が見せた立ち振る舞いに、8年前のやんちゃな面影は一切ない。写真:滝川敏之

 レフティが8年ぶりに愛するクラブへ帰還した。
 
 河野広貴、28歳。東京Vの下部組織で育った男はプロ12年目のシーズンに古巣へ戻った。世代別代表でも活躍してきた河野は2008年にユースからトップへ昇格。以降はキレのあるドリブルで攻撃の中核を担い、"ヴェルディ"の未来を担う存在として多くの人から期待を懸けられてきた。

 一方でクラブはJ2から抜け出せず、苦しい時期の真っ只中。河野が移籍を視野に入れるのは至極当然の流れだった。
 
 そうした想いを抱えて迎えた2012年。河野は大きな決断を下す。東京VのライバルクラブであるFC東京に加わったのだ。以降は青と赤のキッドを纏い、己の技を研鑽。2017年の夏に鳥栖へ完全移籍したが、気が付けば東京Vを離れて8年の月日が経っていた。

 そして、迎えた今冬。河野は愛着あるクラブに出戻る形となった。
 
 過去の経緯があるだけに、サポーターの中には異を唱える人もいるだろう。河野も「サポーターも思っているところがあるはず」と自身の立ち位置を理解している。だが、"ヴェルディ"への想いは今も昔も変わらない。
 
「動けるうちにヴェルディに戻りたかったし、ずっと帰りたいと思っていた」
 
 そうした情熱は持ち続けてきた一方で、プレースタイルはかつての河野の姿から想像できないほど変わった。デビュー当時は自分の好きなドリブルしかせず、所かまわずに仕掛けていた。今は違う。仲間のために献身し、「多少プレースタイルが変わったと言われますけど、それはチームが勝つためにやっている。周りが何を言おうとも、必要なのはハードワークや守備」ときっぱりと言い切る。そう思えるようになったのも、"外の世界"を経験したからこそだ。
 
「外に出て感じたのは、ヴェルディの選手は自分のやりたいことをできるし、図抜けた個人技もある。でも、チーム全体を考えた時に自分だけ良くても勝たなければ意味はないし、周りのことを考えないといけない。攻守の切り替えも足りなかったなと思う。あれだけドリブルは良いと言われていましたけど、外に出てみたら、そうでもなかったんです」

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