かつての中村俊輔のように――包容力とギラギラ感を醸し出す長友佑都が若手たちと築く師弟関係

2019年01月17日 飯尾篤史

振り返れば岡田ジャパンの頃、中村俊輔のそばにはいつも「弟子」を公言していた長友の姿があった

若手と積極的にコミュニケーションを取る長友。豊富な経験を伝えつつ、自らも刺激を受けているという。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 UAEで開催されているアジアカップ。日本代表のトレーニング前に見られるお決まりの風景がある。32歳の長友佑都が20歳のふたり、堂安律と冨安健洋と3人でボールを浮かして落とさないように回す、リフティングゲームに興じているのだ。
 
 ところが、オマーン戦の2日後、いつもの光景はなかった。
 室屋成や三浦弦太とリフティングゲームに講じていた北川航也を長友が捕まえ、隣同士で座ってしばし会話すると、ランニングに入ってからも列の後方で並んで走ったのだ。

 オマーン戦に先発した北川は、不完全燃焼のまま途中交代に終わっていた。その試合後、長友は「まだ遠慮がある。ちょっと彼と話したいと思います」と語っていた。それを実行に移したわけだ。

 振り返れば、長友が日本代表に選ばれた岡田ジャパンの頃、中村俊輔のそばにはいつも「弟子」を公言していた長友の姿があった。食事の際には同じテーブルに座り、ランニングをする時も隣を走った。今大会における長友と堂安の師弟関係は、まるでかつての俊輔と長友の関係を彷彿とさせる。
 
 その俊輔が代表から引退したザックジャパン以降になると、長友は同級生の本田圭佑と並んで走るようになり、世界一を目指し、切磋琢磨を続けた。その盟友が代表チームを去った今、ベテランサイドバックの周りには若い選手たちがいる。
 
「僕自身も若い頃は試合に対して不安を覚えていた。そういうなかで俊さんや(中澤)佑二さんが支えてくれたから、そこで学んだものを彼に伝えたかった。ここで戦えるのは限られた人しか経験できないこと。この環境を楽しんでほしい」

 初選出から10年が経ち、酸いも甘いも噛み分けた長友が備えた、若手を包み込む包容力は、森保ジャパンにとって大きな武器となっているのは間違いない。
 
 もっとも、ただ、若手をサポートしているわけではない。
 トルクメニスタン戦の前、堂安、冨安との交流について問われた長友は、「声を掛けてというより、僕が入れてもらっているんですよ。自分自身も若返りたいんでね。彼らからエネルギーをもらって」と言って笑った。それが冗談に聞こえなかったのは、森保ジャパンに初合流したパナマ戦前にも「若い選手たちよりも走れないといけない」「ギラギラ感を失いたくない」「まだまだこれから」と語っていたからだ。
 
 若い選手から刺激をもらい、若手に負けないようにまだまだ自身をアップデートさせたい、という貪欲さがひしひしと伝わってくる。
 
 包容力とギラギラ感と――。サッカー選手としての成熟とは、こういうことを言うのだろう。若い代表チームのなかで長友佑都の存在がひときわ頼もしく感じられる。

取材・文●飯尾篤史(スポーツライター)
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