【選手権】黒田剛vs平岡和徳──熱きサッカー観で結ばれたふたりの名将

2019年01月04日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

ロシア・ワールドカップをともに観戦するほどの間柄

黒田監督(左)と平岡総監督(右)。それぞれの地域の、そして日本サッカー界の発展に大きく寄与してきたふたりの名将だ。厚い信頼関係で結ばれる。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権・3回戦]青森山田 3-0 大津/1月3日/等々力

 試合前にも試合後にも、固い握手が交わされた。多くの言葉は必要ない。あるのは、長い時間をかけて積み上げられた分厚い信頼関係だ。

 青森山田の黒田剛監督と、大津の平岡和徳総監督。言わずと知れた、東西を代表するふたりの名将だ。

 1月2日の2回戦で大分を下した大津は、ラウンド・オブ16で青森山田と対戦することが決まった。その一報を受けた平岡総監督は報道陣の前で軽く敵将の黒田監督をいじり、「Jリーガーを輩出した数ではまだ僕に敵わない。どこに行っても付いてくるから、しょうがないので相手してあげてるんですよ」と独特の言い回しで笑いを誘う。冗談ですからねと念を押し、「毎年毎年、本当に素晴らしいチームを作り上げてくる。仲間として尊敬していますよ。明日のゲームは本当に楽しみですね」と話し、満面の笑みを浮かべた。

 大会屈指の好カードとなった一戦は、前半に風上に立った青森山田が効率良く2点を奪い、守っては三國ケネディエブスを中心とした堅守で大津の波状攻撃をシャットアウト。後半にも加点して3-0の快勝を収め、ベスト8に名乗りを上げた。

 大津戦のあと、ロシア・ワールドカップを一緒に観戦した"兄貴分"について黒田監督を直撃してみた。

「兄貴分? そういうところもあるし、現場での同僚という感覚もある。僕が監督になってからの付き合いだけど、サッカー観が本当によく合うし、ずっと一緒に切磋琢磨しながらやってきて、ともに成長してきた。平岡さんはそれこそ、大津町を大きなものにしたよね。町おこしのところを含めて、僕が目ざすものと同じ。見本にさせてもらった部分はあるし、人間として、同じサッカー指導者として、本当に尊敬している。頼もしいし、お互いをいい意味で意識し合えているというか。大切な仲間ですね」

 平岡総監督は帝京高3年時、1983年度の第62回高校選手権で優勝を飾った。決勝であの三羽ガラスを擁する清水東高を沈めた決勝点は、主将・平岡の芸術的なループパスから生まれたものだ。その時、黒田監督は中学1年生。カナリア軍団の司令塔は、選手権を彩る5つ上のヒーローだったはずだ。

 そんな年齢差を超え、あるいは青森と熊本という距離を超え、同じサッカー観で結ばれるふたりの名将。もし今大会で黒田監督が2年ぶりに選手権を制したなら、平岡総監督はどんな言葉を掛けるのか。きっと持ち前のユーモアと愛情が溢れる"毒舌"で、僚友を祝福するのだろう。

取材・文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
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