【選手権】GK歴8年目で迎えた初のPK戦。秋田商の2年生守護神はいかにしてヒーローになったのか

2019年01月03日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

PK戦を苦手にしていた山口が2本をストップできた理由は?

PKが苦手だった理由は悩みながら飛んでいたからだ。それを克服すべく、山口が取った策は…。写真:田中研治

[高校選手権・3回戦]秋田商 1(4PK2)1 龍谷 /1月3日/フクアリ
 
 32大会ぶりの選手権8強入りの立役者は2年生守護神だ。
 
 今大会で台風の目になりつつある秋田商。格上と目されていた四日市中央工、富山一をそれぞれ1回戦と2回戦で撃破し、8強入りを懸けた大一番に勝ち上がってきた。勢いに乗るチームの実力は果たして本物なのか。本当の力が試されるなか、選手権優勝2度を誇る古豪は佐賀の新鋭・龍谷と相まみえた。

 前半に1点を先行され、今大会では初めてリードを許す展開となったが、終了間際の後半40分に長谷川悠(3年)の右CKから山本翔太(3年)が起死回生の同点弾。試合の行方はPK戦に委ねられた。
 
 ここでヒーローになったのが、「当たっていたから1本は止めてくれると思っていた」と小林克監督が期待を寄せていたGKの山口雄也(2年)だ。1本目で後藤嵩裕(3年)のキックをいきなりストップすると、3本目でも今村慎二(3年)が放った渾身の一撃を阻止。2本のビックセーブでベスト8進出の立役者となった。
 
 2年生ながら正GKを任される山口は試合後、驚くべき事実を伝えてくれた。

「公式戦でPK戦に挑むのは初めてだったんです」
 
 小学校3年生の時にキーパーグローブを身に付けて以降、常に最後尾でチームを支えてきた。ただ、不思議なことにPK戦とはまるで無縁で、しかも得意ではなかったというのだ。
 
「どっちかというとPKは苦手。練習試合でも何回あったのですが、触っても決められてしまっていた」
 
 そこで8強入りが懸かった場面で山口は決断する。今までの考えを捨て、相手が蹴る前に飛ぶ方向を決めたのだ。
 
「悩んで飛ぶことが多かったんです。なので、最初からコースを決めて、キッカーの利き足の対角に思い切り飛ぼうと思いました」
 
 思い切った判断で3回戦のヒーローとなった山口。多くの人から注目を集める大舞台で最高の瞬間を味わったが、かつての仲間に成長した姿を見せられたのも大きな喜びだ。

次ページ龍谷戦に駆け付けたかつての仲間に…

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