【選手権】延べ38人が蹴って“枠外し”ゼロの超ハイレベルなPK戦。激闘制した帝京長岡の指揮官は「選手を褒めてあげたい!」

2019年01月02日 竹田忍(サッカーダイジェストWeb編集部)

PK戦での勝利に「感慨深い」と指揮官。

帝京長岡の守護神・猪越を中心に歓喜の輪が弾ける。試合後は両チームに温かい拍手が送られた。 写真:山崎 賢人(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権・2回戦]帝京長岡 2(17PK16)2 旭川実業/1月2日/NACK5スタジアム大宮

 80分を戦い終えて2-2。勝負の行方はPK戦に委ねられた――。

「選手を褒めてあげたいなと思います!」

 両チームを通じて延べ38人が蹴り、スコアは17-16。長い長いPK戦に勝利した直後、緊張から解放された帝京長岡の古沢徹監督は、そう言って安堵の表情を浮かべた。

「PKの練習は選手権前の、調整のための練習試合でやった程度です。練習と本番ではどうしても緊張感が変わってしまうので」

 これまでPKには何度も泣かされてきた。今回2年ぶり6度目の選手権出場を果たした帝京長岡だが、過去5大会のうち4回はPK戦で負けていた。さらに昨年夏のインターハイも、県予選の決勝で新潟明訓にPK戦で敗れ、出場権を逃している。古沢監督は当時を振り返る。

「インターハイの県予選のときは、事前にPKの練習をし、データを取って、外した回数が少ない子に蹴らせたんです。でも、結局負けました。だから今回は、しっかりゲームに入れてる子に蹴らせようと思ってました」

 5人ずつ蹴り終えてスコアは4-4。サドンデス突入後は、両校とも6番目から7人連続で成功し、2巡目に入った直後の13番目でともに失敗。そしてその後、帝京長岡は6人連続で決めると、最後はGKの猪越優惟(2年)が相手のキックをストップ! その瞬間、黄金のベンチコートを羽織った帝京長岡イレブンが疾走を開始し、応援団が陣取るバックスタンド前で歓喜の輪が弾けた。

 延べ38人が蹴って、枠を外した選手はひとりもいなかった。クロスバーの上に高々と打ち上げる者も、コースを狙いすぎてポスト横に外す者もいない超ハイレベルなPK戦。だからこそ、勝利の行方はGKに託されていた。

「止めるの遅ぇよ!」ロッカールーム前で、満面の笑みを浮かべたコーチに迎えられた殊勲の2年生守護神は、負けじと最高の笑顔を浮かべ、ハイタッチをかわしていた。

「1回戦で(2年前に敗れた)四国のチームに勝利し、そして今回こういうかたち(PK勝ち)でさらにひとつ上に進めたというのは、なにか感慨深いものがあります」

 帝京長岡の3回戦の相手は、小嶺忠敏監督率いる長崎総科大附。言わずと知れた強豪校だが、古沢監督は「準備はできていますので」と自信を見せた。ここを突破すれば、指揮官みずから目標に掲げる「ベスト8」に到達する。

 圧倒的なメンタルの強さ、キック技術の正確さ、そして頼れる守護神の活躍によって、"激闘"と言っていいPK戦を制した帝京長岡の、さらなる躍進に期待したい。

取材・文●竹田 忍(サッカーダイジェストWeb編集部)
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事