【選手権】「みんなに申し訳ない...」インターハイ得点王の富山一・小森飛絢が人目をはばからずに涙を流した理由

2019年01月02日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

卒業後は中村俊輔の恩師・佐熊氏が監督を務める新潟医療福祉大へ

試合終了号からバスに乗り込むまで涙が止まらなかった小森(10番)。試合後のミックスゾーンでも号泣し、自分を責めた。写真:田中研治

[高校選手権・2回戦]秋田商 1-0 富山一/1月2日/柏の葉
 
 最後まで涙が止まらなかった。
 
 1月2日、富山一は2回戦で秋田商と対戦。序盤から優勢に試合を進めて迎えた後半29分、相手のFKをGK近藤昭宏(3年)が掴み損ねてしまう。このこぼれ球を鈴木宝(3年)に決められ、5年前の選手権覇者は2回戦で大会から姿を消した。
 
 試合後、ほとんどの選手が涙を見せた。相手のロッカールームに主将の中田青(3年)が千羽鶴を届けたが、その際も嗚咽を漏らしていた。その状況を見れば、誰もがミックスゾーンを通る彼らに話しかけるのを躊躇したくなる。
 
 そうした重苦しい雰囲気のなか、誰よりも涙を流している選手がいた。10番を背負う小森飛絢(3年)だ。夏のインターハイでは大会得点王に輝き、チームをベスト8に導いたエースは、この2回戦でなにもできなかった。好機に絡み、シュートチャンスがなかったわけではない。ただ、仇になったのは、肝心なところで決め切れなかった点だ。後半終盤にドリブルで仕掛けてあわやPKという場面も作ったが、無情にも笛は鳴らなかった。
 
 目を真っ赤にさせて報道陣の前に現われた小森は声を振り絞る。「決定機がありましたし、そこで決め切れないとこういう結果になる。本当に悔しいです」と自分の出来を責め、「1回戦の西京戦では自分がマンマークをされた。それは自分がインターハイで得点王になったから、マークが厳しくなったと試合中に思った。結局、1回戦も2回戦も結果を残せず、そのことが本当に悔しい」と精一杯の言葉で反省の弁を述べた。
 
 そうした想いが溢れ出たのも、誰よりも責任を感じていたからだ。「インターハイで負けてから、誰にも負けたくない、相手に負けたくない。そういう気持ちがかなり強くなった」と、誰よりも勝負に対してこだわっていた小森は期待に応えられなかった。

 夏の全国舞台では「この大会でプロ入りを勝ち取る」と言い切って勝気な一面を見せていた男が、「チームを勝たせる仕事ができなかったので、本当にみんなに申し訳ない」と詫びたのもそのためだ。
 
 多くの悔しさを味わった小森は言う。
 
「夢を大学卒業後に叶えられるように、1日1日努力をしたい」
 
 卒業後は中村俊輔の恩師・佐熊裕和氏が率いる新潟医療福祉大で技を磨く。高校サッカーで頂点に立てなかった。目標としていた高卒でのプロ入りも果たせなかった。誰よりも強くなるために、小森は秋田商戦の涙を胸に刻んで前に進む。

取材・文●松尾祐希(サッカーダイジェストWEB編集部)

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