【現地発】マドリー戦で全3得点に絡み、一躍その名を世界に轟かせたバルサ・カンテラ出身のエイバルDFがアツい!

2018年12月16日 エル・パイス紙

古巣復帰への挑戦はまだ始まったばかり。

13節のマドリー戦で、対峙するオドリオソラ(右)を翻弄し、エイバルに3ゴールをもたらしたバルサBからレンタル中のククレジャ(左)。古巣に返り咲き、トップ昇格を狙う。(C)Getty Images

 いまから2年ほど前、バルセロナのフベニール・カテゴリー(U-19)のチームがUEFAユースリーグでボルシア・メンヘングラードバッハと敵地で対戦した(バルサが3-1で勝利)。その中で、ひと際目を引く活躍を見せたのがマルク・ククレジャだ。

「トップクラスの選手に成長する可能性を秘めている」「バルサのトップチームで活躍するために必要な能力をすべて持っている」。関係者に陣取られた観客席では、ククレジャに対する賞賛の言葉が飛び交っていた。

 それからまもなく、バルサBとの契約を延長。クラブ関係者のひとりは、「ここからさらなる成長を遂げるかどうかは本人の努力次第だ。その一環として、レンタルに出す可能性もある」と期待を込めて語った。

 そして今夏、ククレジャはトップチームへの昇格を賭けてプレシーズンキャンプに臨んだ。クラブからは当初より「居場所の確約はできない」と警鐘を鳴らされていたものの、バルサで活躍することを夢見る彼は、困難を承知の上で勝負に挑んだ。

 しかしながら、最終的にエルネスト・バルベルデ監督が左SB、ジョルディ・アルバの控えとして選んだのは、ククレジャよりもさらに若いファン・ミランダだった。

 バルサBが属しているセグンダB(実質3部リーグ)のレベルにすでに物足りなさを感じていたククレジャは、他クラブへの移籍を志願。ドイツ、イタリア、スペインの1部のクラブからオファーが殺到する中、新天地に選んだのは、テクニカルスタッフがバルサBの16試合に足を運んでククレジャのプレーをチェックするなど、かねてから熱心にアプローチを続けていたエイバルだった。
 
 ククレジャはエイバルでの入団発表(1年間のレンタル)の際に、こう抱負を述べている。「インテンシティーを高いレベルで維持しながら、攻撃的な姿勢を前面に押し出しているエイバルのサッカーは、僕にすごく合っている。チームの成長に寄与するとともに自らも成長していきたい」

 本人のコメントにもある通り、ククレジャは攻撃に特徴がある選手だ。ゴンサロ・エスカランテの先制ゴールにつながったクロス、ボールを奪うや間髪入れずに中央に折り返し、セルジ・エンリクの2点目を引き出したアシストのパス、キケ・ガルシアの3点目をお膳立てしたゴールライン際からのセンタリングと、3ゴールすべてに絡む働きを見せたラ・リーガ第13節のレアル・マドリー戦(3-0でエイバルが勝利)は、彼の長所がぎゅっと凝縮されたような一戦だった。

 この試合でククレジャを、左SBではなく、昨シーズンまで日本代表の乾貴士が担っていた左ウイングの位置で起用したホセ・ルイス・メンディリバル監督の判断も、大活躍の要因のひとつだった。

 指揮官はマドリー戦後、「クク(ククレジャの愛称)の活躍にはみんな驚いただろう。若く、まだ知名度もそれほど高くないからね。本職ではないウイングで素晴らしいプレーを見せてくれている」と称賛の言葉を送った。

 バルサの関係者の間でもククレジャについては、守備力より攻撃力を持ち味とした選手という評価で一致している。バルサのSBには高度な攻守のバランス感覚が求められるが、マドリー戦の活躍で一躍その名を世界に轟かせたククレジャの、古巣復帰を勝ち取るための戦いはまだ始まったばかりだ。

文●ジョルディ・キシャーノ(エル・パイス紙/バルセロナ番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
 

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