【高円宮杯】熱血指揮官が就任4年目で掴んだ初の日本一。沢田謙太郎監督が想いを馳せた先人たちの情熱

2018年12月16日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

「選手たちがサンフレッチェでやりたいと思える環境を作ってくれた」(沢田監督)

熱血漢として知られる沢田監督。試合後は指示を出し過ぎ、声が枯れることもしばしば。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 そこかしこで繰り広げられる激しい球際の攻防。この一戦に懸ける想いがぶつかり合い、2種年代最高峰に相応しい戦いとなった高円宮杯U-18サッカープレミアリーグ2018のファイナルは、広島ユースが6年ぶりにカップを掲げた。
 
 試合後、チームを率いる沢田謙太郎監督は選手たちに胴上げされ、宙に舞った。現U-16日本代表監督の森山佳郎監督の後に指揮を執った望月一頼監督から引き継いで早4年。自身初のプレミアリーグ制覇に頬を緩ませた。
 
 沢田監督が監督の座に就いたのは15年。"育成の名門・広島ユース"を厳しくも愛のある指導で鍛え上げ、特筆すべきタレントが不在であっても毎年のようにプレミアリーグで優勝争いを展開してきた。しかし、日本一には縁がなく、クラブユース選手権やJユースカップも含めて無冠。WESTを制した2016年のチャンピオンシップ(現在のファイナル)は青森山田に苦汁を舐めた。
 
 現行のレギュレーションとなってからチームは歴代最多となる3度目の優勝だが、自身が監督に就任後は結果が残せていない。そうした状況を踏まえれば、是が非でも掴みたいタイトルだったのは想像に容易い。試合後に安堵の表情を浮かべたのもそうした想いがあったからだろう。
 
 ただ、今回の結果は監督の指導だけで成し得たわけではない。当然、沢田監督も認識している。試合後、指揮官の口から出てきた言葉も広島に関わる人に対しての想いだった。
 
「森山監督の時から広島に入りたい選手が多く、言葉が合っているかは分かりませんが、(チームは)一目置かれていた。(最初に)今西忠男さんが寮を作り、(いろんな人たちが)サンフレッチェでやりたいと子供たちに思わせてくれる環境を作ってくれた」
 
 広島は他のクラブに先駆け、Jリーグ開幕直後に下部組織のために寮を設置。さらに近隣の吉田高と提携し、人格形成や学業の面でも子供たちをバックアップしてきた。選手の育成に並々ならぬ情熱を燃やし、長年に渡って築き上げてきたからこそ現在の結果がある。

  そうした様々な関係者たちのためにも、沢田監督は広島ユースのトップとしてタイトルを掴みたいと考えていた。

「リーグ戦も含めてかなりきつい状況で最終節を迎えました。今日も危ないシーンがありましたが、なんとか勝つことができました。みんなで守ってきたものを引き継げるのではないかなと。なので、安心しております」
 
 高校最後の試合で最高の結果を掴んだ選手たち以上に、今回の優勝は沢田監督にとって特別な瞬間だった。

取材・文●松尾祐希(サッカーダイジェストWeb編集部)

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