「サッカー以外で僕のことは気にしないで」 世界一の優勝請負人カンテが“相反する”2つの願望を語る

2018年12月12日 サッカーダイジェストWeb編集部

謙虚で質素でスポットライトが苦手な王者

人前に立つことや目立つのが苦手なのに、ピッチ上でのプレーが自身の注目度を高めていく。慣れていくしかないが、慣れてほしくもないような……。 (C) Getty Images

 エヌゴロ・カンテといえば、その無尽蔵なスタミナでピッチを所狭しとばかりに走り回り、相手のキープレーヤーを完全に封じてしまうエースキラーである。

 また2015-16シーズン、レスターを奇跡のリーグ優勝に導いたのを皮切りに、翌シーズンには加入したばかりのチェルシーでもフル稼働してプレミア制覇に貢献、さらに17-18シーズンはFAカップ優勝、そしてフランス代表ではロシア・ワールドカップで抜群の働きを見せて世界制覇を達成するなど、「優勝請負人」としても認知されるようになった。

 どんな監督も欲しかる、現在のサッカー界で最も価値がある選手のひとりと言えるカンテ。ゆえに常に注目を浴びる宿命を背負うこととなったが、この状況に彼はいまだ戸惑いを隠せないようだ。

 この27歳の小柄なMFが、謙虚で、質素な生活を好み、そしてスポットライトを浴びるのを苦手とする"シャイ"な人間であることは、よく知られている。ロシアW杯決勝後も隅っこで仲間の歓喜を見守り、彼らから促されて、初めて優勝トロフィーを手にすることができたというエピソードは、彼の人間性を端的に物語っている。

 とにかく目立つのが苦手な彼は、チェルシーのオフィシャルマガジンで、ある意味"矛盾"する2つの本音を語っている。ひとつは、タイトルへの欲求だ。

「タイトル獲得の喜びを、仲間たちとこれからも味わいたいと思っている。僕は、彼らほど派手に喜びを表現はしないけど、同じぐらいに楽しんでいるんだ」

 そう語るカンテは、ロシアW杯でのエピソードを明かしている。

「優勝した後、仲間の何人かが僕をカメラマンたちの前に押し出して、歌い出したんだ。僕が、目立つのが苦手なのを知った上でね。でも、とても良い瞬間だったし、楽しめたよ。特別な経験だったし、あの瞬間がまた訪れてくれたらいいね」

 そう語りながらも、彼は一方でこうもこぼす。

「僕は、サッカーをプレーしている。サッカー選手として自分を見てほしいし、サッカーのことを聞いてほしい。だから、サッカー以外のことで、僕が普段は何をしているかとか、どんな人物かとか、僕が何が好きかとかは、あまり関心を持たれたくないんだ」

 屈指の高給取りとなった今でも高級車ではなく、ミニクーパーに愛用し続けているというエピソードは、自身の好感度をますます上げるものとなっているが、それすらもカンテにとっては苦痛のようだ。

 とはいえ、ワールドクラスのスターに人々が興味を持ち、その行動に逐一注目するのは自然のことであり、止めようがない。カンテがサッカー選手としてピッチ上で輝きを放つ限り、残念ながら彼の望みが2つとも叶うことはないだろう。
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