【現地発】アーセナルは“エメリ流の進化”に成功している――英国人記者が見た「ノースロンドン・ダービー」

2018年12月08日 スティーブ・マッケンジー

アーセナルvsトッテナム――伝統の一戦

今夏よりヴェンゲルからチームを引き継いだエメリ。シーズン当初から一転、クラブの調子は上昇中だ。 (C) Getty Images

 12月2日、日曜日。冷えた風が吹くイングランドでは、18時からプレミアリーグのダービーマッチが3試合も放送された。

「ウエストロンドン・ダービー」「ノースロンドン・ダービー」「マージーサイド・ダービー」の3試合だ。フットボール・ファンには、たまらなく悩ましい週末だった。

 このうち、私はアーセナル対トッテナムの「ノースロンドン・ダービー」が行なわれるエミレーツ・スタジアムに足を運んだ。イングランドにおいて最大のライバル同士である両チームの初対戦は、実に1900年代前半まで遡る。

 このダービーの名前は、アーセナルがロンドンの南側からテムズ川の北側にホームを移したことに由来する。もともとテムズ川の北側はトッテナムのテリトリーであったこと、そして本拠地ホワイト・ハート・レーンからわずか6kmほどのスタジアムに移転して来たことで、"ノースロンドン"ダービーが誕生した。

 私は若かったころ、ダービーを観戦することに夢中だった。なぜなら、そこには確かな"情熱"が存在するからだ。例えば、マンチェスター・ユナイテッドとリバプールが対戦する「ノースウエスト・ダービー」を、生きているうちにいつか生で観戦してみたいと夢見ていたものである。

 日曜日のエミレーツ・スタジアムは、普段のリーグ戦とは雰囲気が異なっていた。ファンは普段よりも興奮し、騒音を打ち鳴らす。それは、試合を通じて止むことはなかった。

 トッテナムは、2014年に就任したマウシリオ・ポテチェリーノ監督の下、15-16シーズンに3位、16-17シーズンに2位、17-18シーズンも3位と奮闘しており、リーグで確かな地位を得たように思える。

 だが依然として、トッテナムが無冠であることについては厳しい見方が根強い。試合前、アーセナルのホームに設置された巨大なディスプレイに、アーセン・ヴェンゲル政権下で獲得した数々のタイトルやトロフィーが映し出されていたのは、決して偶然ではなく、スパーズ(トッテナムの愛称)に対する"あてつけ"の意味もあったろう。

 このゲームはプレミアリーグの優勝がかかった戦いというわけでもなく、勝てばどちらかがトロフィーや勲章を手にするわけでもない。ただ、両クラブのサポーターにとって非常に熱い戦いであったことは間違いないたろう。

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