【J1コラム】フォルランが本田化? 降格の危機が忍び寄るセレッソ

2014年08月18日 熊崎敬

ウイングバックを攻撃に専念させることで。

両チーム合わせて9ゴールが生まれた乱打戦に見えたものとは――。 (C) Getty Images

 等々力競技場近くの公園では、夜10時近いというのに子供たちがボールを蹴り合っていた。9ゴールが飛び出した川崎フロンターレとセレッソ大阪の一戦を見て、無性にボールを蹴りたくなったのだろう。
 
 家路につく大人の中からは「大味だ」という声も聞こえてきたが、鮮やかなゴールの数々は、少年たちの心に火をつけた。「あんなふうになりたい」と思わせるのは、プロフェッショナルの大事な仕事。こういう乱打戦も悪くない。
 
 首位に勝点差1と肉迫する川崎は、前節の浦和レッズ戦に続いて3-4-3を採用した。3バックはともすれば腰の重い5バックになりがちだが、川崎のそれはふたりのストッパーが大きくワイドに張り出すという特徴がある。
 これはウイングバックを前方に押し出し、攻撃に専念させるためだ。右では森谷賢太郎が小林悠と、左では登里享平がレナトとコンビを組み、分厚い攻撃を繰り広げる。
 
 川崎にはスピードとボール扱いに秀でた選手が多い。この攻撃的な資質を、風間八宏監督はしっかりと組織に反映させた。
 ウイングバックを攻撃に専念させることでボール保持者の前に数多くの選択肢を作り、敵を引きつけては巧みに背後を取り、面白いようにチャンスを創る。局面で細かく回しているかと思うと、今度は逆サイドに飛ばし、レナトがスペースを切り裂く。見ていて飽きない。
 
 等々力に行けば、面白いものが見られる――。
 そんな興奮がスタジアムに充満している。
 それにしても、C大阪にとってはもったいない敗戦だった。
 
 J1屈指の攻撃力を誇る川崎に対して、前半の彼らは成す術がなかった。中村へのマークが甘く、右往左往する羽目になった。5分に南野拓実が先制したが、前半だけで4ゴールを失った。
 
 ハーフタイムを境に2人を代え、4-5まで追い上げたが、前半15分あたりから、何かを変えなければならないことは明らかだった。
 
 マルコ・ペッツァイオリ監督は後手に回ったことについて、「選手を入れ替えてシステムを変えなければならなかったので、ハーフタイムに説明して変えた」と語った。修正箇所が多すぎたため、ハーフタイムまで動けなかったのだ。その間、チームは4ゴールを失うことになった。
 
 つまり彼らは、前半をスカウティングに費やしてしまった。その成果は後半に表われたが、試合前からしっかりと分析ができていれば、前半に破綻することはなかっただろう。力のある監督なら、前半途中で大手術に踏み切ったかもしれない。
 
 6月半ばに就任したドイツ人監督にとっては、フォルランの処遇が避けては通れないテーマになるかもしれない。
 
 この日のベストといえるスーパーボレーを決めたフォルランだが、組織の中では機能したとは言い難い。とくに前半は守っては中村を自由にし、攻めてはボールを欲しがってあちこちに動くことで、チームの流れを滞らせた。結果は出すが、流れを止めるという意味で、ブラジル・ワールドカップの本田圭佑を思わせた。
 
 良くも悪くも影響力のあるフォルランを、どう扱うか。中途半端な大御所扱いが続けば、悲惨な結末が待っているかもしれない。
 
取材・文:熊崎敬
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