湘南のキーワードは「徹底」。浦和戦の2ゴールに込められた指揮官の信念

2018年11月25日 隈元大吾

倍以上のシュートを打たれながらも、粘り強く対応して勝点3を手繰り寄せる

写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 湘南の得点機は不意に訪れた。押し込む相手を撥ね返し、山﨑凌吾のヘッドを経てロングカウンターに転じる。すかさず抜け出したのは梅崎司だ。ドリブルで左サイドを駆け上がると、間もなくボックスに至り、相手の猛追に遭いながらも巧みにコースを捉えた。ここ3試合無得点が続いていたチームにとって待望の先制点である。
 
 20分のこのゴールシーンの一連に、週明けのトレーニングがシンクロする。彼らはピッチの縦幅をいっぱいに使い、自陣からパスを介してドリブルシュートに持ち込むメニューを行なっていた。
 
 取り組んだ練習と準備がそのまま試合に活きたという意味ではない。山﨑が球際で競り勝ち、梅崎が出足で相手を上回り、さらにはシュートを決め切ったディテールは、一朝一夕に成し得るものではないからだ。
 
「自分たちの基準を取り戻す練習をした」と、曺貴裁監督は先日のトレーニングについて意図を語っている。くだんのメニューのみならず、球際や切り替え、ゴール前で身体を張るといった、チームとして日々大切に育んできたやるべきことを彼らはいま一度見つめ直し、そうしてこの日のピッチに注いだのだ。
 56分に記された追加点もまた然りである。相手のパスのこぼれ球に石川俊輝がいち早く反応し、逆サイドへふわりとパスを送ると、受けた菊地俊介は相手の寄せにも粘り強く運び、貴重な追加点をねじ込んだ。浦和にとっては、素早いリスタートが主審に当たり、ボールがこぼれた不運はある。ただ、「リスタートを早くやられると思って準備していた」と石川が振り返ったように、彼らの切り替えは状況に揺るがず速かった。
 
 自分たちの倍以上のシュートが相手に記録されたように、ゲームそのものは浦和が押していた。興梠慎三が巧みに仕留め、1点差に詰め寄られると、終盤はさらなる猛攻に晒された。それでも彼らは、前線からGKまでゴール前で身体を投げ出し、粘り強く対峙して、勝点3を手繰り寄せた。
 
 この日の一戦について、指揮官は「徹底」をポイントに挙げた。

次ページ自分たちの基準を再確認し、無骨なまでに徹底

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