J2トップの76得点を挙げた大分の攻撃サッカーは、6季ぶりに復帰するJ1でも通用するのか

2018年11月19日 柚野真也

26節の岐阜戦を節目に、トリニータの“変幻自在のサッカー”が確立された

横浜FC、町田と勝点で並んだものの、得失点差で2位を確保した。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 リーグ最終節の山形戦は引き分け、勝点で3チームが並んだが、大分は得失点差で2位となり6年ぶりにJ1復帰を決めた。就任1年目でJ3からJ2に昇格させた片野坂監督は、同一クラブで史上初の"2段階昇格"を達成した。
 
 今季の大分の特徴は、なんといっても76得点というリーグトップの得点力にある。ふた桁を得点した選手が4人。12得点の馬場、藤本の今季加入組を含め、誰かを抑えれば得点を防げるようなチームではなかった。攻撃は常に相手の変化を見て、ゴールを狙おうとする姿勢が貫かれた。GKを含めた後方からのビルドアップで攻撃を組み立て、丁寧なパス回しを軸に大きな展開も織り交ぜ、相手ゴール前には複数の選手が押し寄せる。特に今季は両翼への展開もスムーズだった。右の松本、左の星のウイングバックがサイドに広がり、ピッチの幅を大きく使い、多くのチャンスを演出した。
 
 リーグ前半戦は10節に首位となり、その後は常に上位を争った。しかし、1巡目の対戦が終わったあたりから、対戦相手が大分のスタイルを研究し、対策を練ってきた。思うようにパスが回らず攻撃が停滞し、ミスから失点する場面が増えた。
 
 この難局に片野坂監督は、「大枠はあるが、相手に合わせた対応を考えながら、それぞれがプレーしやすいように考えた」と選手の組み合わせ、配置を変えマイナーチェンジを繰り返した。ひとつのきっかけとなったのが26節の岐阜戦だ。中盤に3人のボランチを並べる3ー5ー2のシステムに変更して以降、戦況に応じた戦い方に幅が広がった印象だ。これまで片野坂知宏監督は、「こういうプレーをやってほしい」とプレスの掛け方やポジション取り、ボールを奪った後の動きなど事細かく提示したが、最近は選手が自分たちで的確に状況判断できるようになり、柔軟に戦えるようになった。
 
 ここからトリニータの"変幻自在のサッカー"が確立された。相手がシステムを変え、戦い方を変えても戸惑うことはない。味方の動きを引き出すランやパスを怠らない。球際で戦い、攻守の切り替えを速くするなど、オーソドックスな動きと11人が攻守に渡って最良のポジションを取り続けて相手の綻びを見つける。32節・熊本戦では、これまでの3ー4ー2ー1のシステムに戻したが、根本は変わらなかった。対戦相手によってシステムも戦術も臨機応変に使い分けた。
 

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