【選手権予選】夏の全国王者も敗退… 波乱の山梨を制したのは“湘南スタイル”を意識する日本航空に!

2018年11月11日 吉田太郎

前回はポゼッションスタイルで魅惑のサッカーを展開していたが…

2度目の選手権出場を果たした日本航空。今回のチームはハードワークと全員守備・全員攻撃が持ち味だ。写真:吉田太郎

 インターハイ優勝校・山梨学院が準決勝で延長戦の末に敗退。波乱の山梨県予選は、日本航空が制した。決勝ではハイプレスと、ロングボール攻撃で帝京三にほとんどリズムを与えず。「夏、片道10kmのところへ行って階段走ってまた戻って、オールコートの1対1とかずっと走り込んできたので、走り切れるのは分かっていた」(MF塚越誠也主将、3年)というチームは、後半に押し込まれる時間帯もあったが、走り切って2-0で勝利した。


 前回、日本航空が全国大会に出場したのは6年前。2年生MFの山口和樹(現湘南)を擁していた日本航空は、GKからの徹底したポゼッションと3人4人がかかわって局面をダイレクトプレーで攻略する魅惑のサッカーを展開していた。

 その年は12年インターハイ16強の帝京三や選手権予選3連覇中だった山梨学院を破って全国初出場。選手権本大会は初戦で苦杯を喫したものの、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」のスローガンを体現したバリエーションのある攻撃はインパクト十分だった。

 山口やMF荒木翔(現甲府)のいた翌年も変わらない攻撃サッカーで関東大会に出場したが、彼らのようなずば抜けた判断力と技術力を持つタレントが毎年現われるわけではない。全国の頂点を勝ち取る力を持つ山梨学院や帝京三、韮崎などの強豪、メキメキと力をつけてきた新鋭が争う山梨を自分たちのスタイルだけで勝ち抜くことは困難。また世界の潮流を追いかけるように、高校サッカーでも球際の強度やハードワークがより求められるなか、日本航空の指揮を執る仲田和正監督はポゼッションへの未練を残しながらも、選手たちに勝つことを経験させるため、新たなスタイルへ舵を切る選択をする。

 今年は指揮官が「前回と全く違うスタイルです」と微笑むように、運動量や切り替えの速さ、球際、セカンドボールの攻防で相手を上回ることを徹底。インターハイ優勝の山梨学院に比べると戦力で劣るが、実直に全員攻撃・全員守備をやり通すことで全国王者相手にも十分に対抗できることをスタッフ、選手たちは実感していた。
 

次ページ“湘南スタイル”が自分たちの意識を引き上げる要因になった

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事