【横浜FC】昇格争いを再び混沌とさせたタヴァレス・イズム!! 指揮官は頑なにルール作りを拒んだ

2018年11月08日 高澤真輝

エース不在でも会心の逆転劇が可能だったワケ

前節、大分に3-1で逆転勝ちを収めた横浜FC。残り2節にして、首位に勝点3差と迫った。写真:徳原隆元

「選手たちに任せている部分はある。自分はどちらかと言うと自由にやらせるタイプです。選手たちは機械やコンピューターではない。彼らが考えたこと、思ったことをピッチでやってもらうということが大事」
 
 昨季39節の京都戦からタヴァレス監督が横浜FCを率いて1年が経つ。指揮官が一貫して求めてきたのはピッチに立つ11人が問題を解決して、答えを導き出していくこと。そのイズムが、終盤にきて浸透し始めている。
 
「自分たちでやらないといけない。今年は選手の中でいろんな話をして、グラウンドの中で何かあったり、気付いたりしたら、その場で修正するということを繰り返してきた。そこがすごく一体感にもつながっているのかなと思う」(南 雄太)
 
 練習でもタヴァレス監督は多くのことを選手に与えようとはしない。例えばプレスのスタート位置などの約束事を作って統率を図る監督もいるが、指揮官は頑なにルールを作ることを拒んできた。サッカーは時間ごとに目まぐるしく状況が変わる競技。その時々で対応できるように、あえて規則で縛り付けるようにはしなかったのだ。
 
 その成果が如実に表われたのが会心の逆転勝利を挙げた前節の大分戦だった。エースのイバと攻守で存在感を放っていた野村直輝が出場停止。加えてタイトな守備で中盤を支えた渡邊一仁が負傷で欠場するという事態で苦しい台所事情を強いられていた。
 
 多くの主力選手が抜けて厳しい試合も予想されたなか、代わって入ったのは1トップに戸島章、インサイドハーフに瀬沼優司、ブルーノ・メネゲウという攻撃的な選手たち。彼らが起用された布陣はほとんど急造に近い状態だったが「選手の特性に見合ったチームを構成していくということが自分のスタイル」という指揮官の流儀に従って、機動力のある戸島と瀬沼が前線からハイプレスを繰り出す。
 
 これに最終ラインも続いて押し上げることで、コンパクトな陣形を形成して、一瞬でも相手が怯めばボールを奪ってレアンドロ・ドミンゲス、ブルーノ・メネゲウらが攻撃の形を創出していくという戦術を採った。その中でズレや綻びになりうる部分では、いつも以上に選手間で話し合い、意見を擦り合わせることで問題を解決していく。それは、まさに今季積み上げてきた対応力だった。
 

次ページ「プレッシャーとは捉えていない。ACLでは17万人の観客の中でやったこともある」

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事