たとえ昇格の権利はなくとも――J2で3位に躍進する町田が目指すのは、あくまでも「一番上」だ

2018年11月07日 郡司 聡

町田対策に苦しんでいたが、福岡戦で潮目が変わる

J1ライセンスを所持していないため昇格の権利はないが、チームは優勝を目標に団結している。写真:徳原隆元

 FC町田ゼルビアにとって、5試合ぶりのホームゲームとなったJ2リーグ40節のアビスパ福岡戦。2-1で勝利を告げるホイッスルが鳴り響くと、チーム通算在籍年数8年目を誇る最古参の深津康太は、力強いガッツポーズで勝利の喜びを表現していた。
 
 勝点を72にまで伸ばした町田は2試合を残して、当初のシーズン目標である「6位以内」を達成。なおかつ、首位の松本とは勝点差1と、J2の頂点も狙える位置につけているため、チームの目標は終盤戦から「一番上」に"上方修正"されている。それだけにチーム内にシーズン目標達成への満足感は全くない。
 
 ここ最近の町田は台風の影響によるふたつの延期試合を含む怒涛のアウェー4連戦で1勝1分2敗と、やや足踏みを強いられていた。なかでも未勝利だった直近3試合では、各チームがあの手この手を尽くしてきた町田対策に苦しめられている。しかし、4試合ぶりの勝利を飾った福岡戦で町田はこれまでの悔しさを糧にして勝利につなげた。
 
 福岡はこれまでの4バックではなく、3バックを採用し、最終ラインの背後のスペースを消してきた。3節前のファジアーノ岡山戦で同様の展開を強いられていた町田は、ロングボールを多用せず、福岡が攻撃から守備に切り替わるときに最終ラインが下がることで、中盤にスペースが生じることを逆手に取り、吉濱遼平らボールを運ぶ能力に優れた選手たちがボールを運びながら、バイタルエリアを攻略する形で福岡ゴールに迫った。先制点こそ奪われたものの、途中出場のドリアン・バブンスキーとロメロ・フランクが試合の流れを一変させ、平戸太貴の2アシスト、中島裕希とD・バブンスキーのゴールで見事な逆転勝利を収めている。
 
 相手の町田対策にどっぷりハマることがなく、相手の出方に応じて戦えたことが勝利の遠因となった福岡戦後、対面のドゥドゥを封じた左サイドバックの奥山政幸は「チームとして柔軟に戦えた」と胸を張った。1試合で結論づけるのは早計だが、"柔軟性"を発揮しながら勝ち切ったことは、"成功体験"となり、残り2試合に活かされるだろう。
 

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