連覇目前の川崎は攻撃だけのチームではない!守備戦術の整備こそ今季の強さの要因だ

2018年11月06日 江藤高志

「マイボールを失わない」から「失なうこともある」への意識改革

川崎は攻撃のチームだと思われがちだが、安定した守備も勝利を重ねている理由だ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 クラブ関係者は大久保嘉人、エドゥアルド・ネットの移籍を悔やむ。彼らが残ってくれていればリーグに加え、カップ戦でもタイトルに近づいていたのではないかと声を落とす。逆に言えば彼らが居なくてもリーグタイトルは獲れるだろう、という手応えがチームにはあった。実際に31節の柏戦の勝利により、2位・広島との勝点差が7に拡大。次節にも連覇が現実のものになるところまで来た。
 
 これだけの強さを実現した今季の川崎を特徴づけるのが堅守だ。神戸戦での大量失点が悔やまれるが、それにしても31試合終了時点での24失点は08年の大分の年間失点数と並ぶ数字。残り3試合を無失点で乗り切れれば少なくともタイ記録になる。
 
 失点の少なさが故に守備的な戦いなのかというと、そうではないところがまた面白いところ。52得点はリーグ2位の記録。首位の横浜には1得点差を付けられているが、その横浜は52失点を喫している。川崎の得失点差28という数字はリーグ最多で、攻守のバランスはこの数字から明らかだ。
 
 これだけの結果を残してきた最大の理由は守備戦術の整備にある。攻撃に特化した風間八宏前監督が作った土台の上に、守備面の決まりごとを定着させたのが鬼木達監督。もともと質の高さを持っていた選手たちに、球際の厳しさや奪われた瞬間の切り替えの速さ、メンタルの強さなどの指針を示し、これを徹底させてきた。
 
 出発点が「マイボールを失わない」だった風間前監督に対し、「失なうこともある」と受け入れた鬼木監督は、相手ボールを奪い返すための方法論を教え込んだ。ボールを失う可能性を受け入れることがチャレンジを恐れないメンタルにつながり、必要な場面でのリスクのある攻撃が可能となった。
 
 選手個人のハードワークも印象深い。ここ最近サポーター間で話題に上るのは家長昭博についてだ。家長は、川崎以前のチームでは、走っている印象があまりない、という声も聞かれる選手だった。その家長が必要な状況で見せるフルスプリントがサポーターに感銘を与えている。なぜそこまで走るようになったのか本人に尋ねたが、走行距離については大宮時代のほうが走っていたという。そもそも論として守備の概念が違うのだと家長。
 

次ページ広島が3連勝したとしても川崎は1勝すればいい

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事