【現地発】ロペテギ、苦難の135日。右往左往するしかなかった指揮官はこうして“夢の舞台”を追われた

2018年10月31日 エル・パイス紙

だんまりを決め込み、ペレスの意向に従ったが。

補強において自身の希望がまったく通らなくても、ロペテギは最後まで不平不満を口にすることはなかった。(C)Getty Images

 ジュレン・ロペテギ政権がわずか135日の短命に終わった。

「君は伝説のチームを引き継ぐ。夢を実現させたのだ。巨大で魅力的な挑戦だ。このようなチャレンジができるのは、選ばれたごくわずかな人間だけだ」

 いま考えれば、就任記者会見でのこのフロレンティーノ・ペレス会長の祝辞は、ロペテギに向けた警鐘だったのかもしれない。

 当時、去就問題が浮上していたクリスチアーノ・ロナウドに対して新監督は、「つねに味方であってほしい選手だ。世界最高の選手はここにいるべき」と、残留を希望するコメントを発していた。

 しかし、その26日後に大エースは退団。ロペテギは就任早々、年間50得点と強力なチームリーダーを剥奪された。しかもネイマールの強奪に失敗したフロントは、後釜の補強を見送る。そしてガレス・ベイルを新エースに任命した。
 
 思えば、これが苦難の始まりだった。

 新戦力の補強でも、ロペテギはフロントに対し、DF、MF、FWの各ラインにひとりずつ即戦力の獲得を求め(FWの第1希望はバレンシアのロドリゴ)、CBのヘスス・バジェホとMFのフェデリコ・バルベルデのレンタル放出を進言していた。

 しかし、そのいずれも叶えられなかったばかりか、C・ロナウドに続いてマテオ・コバチッチとテオ・エルナンデズも失うこととなる。前者はチェルシーへ、後者はレアル・ソシエダへ、それぞれレンタルで放出された。

 せめてもの救いは、移籍期限ギリギリでのFWマリアーノ・ディアスの獲得。その他の新戦力は、GKのティボー・クルトワ、右SBのアルバロ・オドリオソラ、そして、その起用法をめぐりフロントと対立することになった18歳のFW、ヴィニシウス・ジュニオールの3選手だった。

 もっとも、こうしたみずからの希望がまったく反映されない補強の連続だったにもかかわらず、ロペテギはひたすらだんまりを決め込み、ペレス会長の意向に従った。だが皮肉にも、シーズンが開幕してからロペテギを悩ませたのは、新戦力の起用法だった。
 

次ページ選手の不信感を増幅させた不可解な起用法。

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