【2014南関東総体】世代屈指の守護神・志村滉、さらなる成長を誓い大会を去る|市立船橋 2-3 広島皆実

2014年08月04日 安藤隆人

3失点を喫したものの、敵将も唸るパフォーマンスを披露。

大会から早々に姿を消した市立船橋。高校世代屈指のGKは冬に向けてさらなる成長を誓った。(C) Takahito ANDO

 2回戦屈指の好カードは、その名に恥じない熱戦かつドラマティックな幕切れとなった。開始19秒、市立船橋は速攻からFW磯野隆明のゴールで先制。いきなり試合が動いた。その後は市立船橋のカウンターに対し、広島皆実が「カウンター返しで、攻め切ることを意識した」と藤井潔監督が語ったように、奪った後に素早く相手のボランチ脇のスペースを使っていくカウンターで応戦する。
 
 白熱の攻防戦は、後半10分に市立船橋のMF齊間隆希が強烈な直接FKを沈めて2-0となる。しかし、そこから展開は一変。広島皆実が疾風怒濤の攻撃を見せるのだ。後半16分に右からのクロスを交代出場のFW梶原亮がヘッドで叩き込むと、同17分には再び右からのクロスをFW俵脩造がヘッドで決め、たった2分間で同点に。さらに後半アディショナルタイムに三度右サイドを破ると、再び俵が押し込み、逆転。広島皆実が2点差をひっくり返す大逆転劇で、3回戦にコマを進めた。
 
 市立船橋にとっては、屈辱の3失点。名門のゴールを守るのは、高校年代でナンバーワンGKと言われる志村滉。安定したハイボールの処理とキャッチングセンス、ずば抜けた反射神経から繰り出されるセービング、そして正確無比なキックと、近代的なGKにとって必要な要素を多く備えたタレントだ。
 
 この試合も左右両方から飛んでくる、広島皆実の質の高いクロスに対しても、「ファーにいいボールが行っても、並のGKなら届かなかったり、手に当てるのがやっとなのに、彼はそれをキャッチしてしまう。やはり素晴らしいGK」と敵将の藤井監督に言わしめるほど、高い技術を披露していた。
 
 前半23分には俵のミドルシュートをフィスティングでセーブ。さらに市立船橋の2点目のFKも、志村の正確無比なパントキック一発でカウンターを成立させ、相手のファウルを誘発して奪ったもの。決して調子が悪いわけではなかった。
 
 しかし、結果は3失点。「自分の未熟さが出た」と試合後、守護神は唇をかんだが、梶原のヘッドも、俵の同点ヘッドと逆転弾も、GKに責任を負わせるのは酷なほど、コースも角度も素晴らしいシュートであった。
 
「今の自分には無理であっても、それを止められるようにならないと上には行けない。どんなシュートであれ、3失点という結果は、それだけ僕の準備がしっかりとできていなかった証拠。コーチング、ポジショニング、セービング含め、すべての質をもっと上げていかないといけない」
 目標はプロ。より上を目指しているからこそ、『あれは止められないシュート』で片付けることは、志村の中では許されなかった。
 
「もっとうまくなりたい。これからさらに成長した姿を見せたい」
貪欲に上を目指す高校ナンバーワン守護神は、この3失点を糧に、さらなる精進によって、より絶対的な存在となって冬の舞台を目指すだろう。そして、目標であるその先の世界も、きっと彼なら力強く実現してくれるはずだ。それだけのポテンシャルと向上心の強さを持つ男。それが志村滉という世代屈指のGKだ。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事