【日本クラブユース選手権】MVP下田悠哉が見せつけた街クラブのプライド|三菱養和 1-0 FC東京U-18

2014年08月03日 平野貴也

「僕らがやらないと街クラブはJクラブに勝てないという意識になってしまう」

持ち前のドリブル技術と圧巻のハードワークで養和の攻撃を牽引した下田(10)。並み居るJクラブを連破しての優勝だ。(C) SOCCER DIGEST

 三菱養和が堅守速攻でタイトルを手繰り寄せることができたのは、ドリブルで相手を引きずれる攻撃があったからだ。ロングパスほどボールロストは多くなく、より確実に敵陣へとボールを運べる。それは、相手を敵陣に押し返すことを意味する。
 
 大会を通じて、三菱養和はFWディサロ明シルヴァーノ、MFの相馬勇紀、下田悠哉のドリブルによる速攻を大きな武器としていた。とりわけ決勝戦で得点機を生み出した下田は、パワフルなドリブルで相手に脅威を与えた。
 
 決勝戦は10分、14分と自力でシュートまで持ち込むと、24分にはショートカウンターを仕掛け、寄せてきた相手を弾き飛ばしながら突進。GKとの1対1で放ったシュートはブロックされたが、2シャドーを組む伊東駿がこぼれ球を押し込んだ。
 
 下田は大会中に「オレが走らないと、ここから先は勝てない。心臓が止まるまで走ってやろうと思った」と覚悟を決めたという。足下で受けてドリブルをするだけではなかった。グループリーグ第3戦の磐田U-18戦をきっかけに、攻守両面での運動量を上げた。
 決勝戦は後半途中で足をつって交代したが、連戦の大会を通じて惜しみなく走り続けた証でもあった。主将の池田樹雷人は「アイツは(体力的に苦しくなる)後半になるとスイッチが入って攻守の切り替えが早くなる。誰よりもハードワークしているし、そういう面で10番らしいプレーを見せてくれている。ほかの選手も後押しされて走らなければと思うし、あれぐらい守備もやってくれると、後ろは助かる」と下田の貢献度の高さを証言した。
 
 準決勝では相手ともつれて倒れた場面から起き上がってゴールを決めており、2戦続けて大舞台での強さを見せて大会MVPにも選出された。1992年にJクラブが誕生して以降は初となる街クラブの優勝という快挙を成し遂げ、下田は「僕らがJクラブを倒さないと、街クラブはJクラブに勝てないという意識になってしまうのではないかと思っていた」と充実感を漂わせた。
 
取材・文:平野貴也(フリーライター)
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