“セクシーフットボール”が復活!? 公式戦10連勝のアーセナル、躍進の背景にあった新指揮官の大改革

2018年10月23日 サッカーダイジェストWeb編集部

「No more Mr Nice Guy(もう、お人好しはやめだ)」

新キャプテンとなったエジルを中心に活気を取り戻しつつあるアーセナル。サポーターからも「俺たちのアーセナルが帰ってきた」というチャントが歌われるなど、その期待度は日増しに高まっている。 (C) Getty Images

「今日の試合では、僕が思うにセクシーフットボールを見せられたと思うよ」

 これは現地10月22日に行なわれたプレミアリーグ第9節でレスターと対戦し、3-1の逆転勝利を収めたアーセナルのメスト・エジルの歓喜のコメントである。

 この日、移籍後初めてキャプテンマークを巻いたドイツ人MFは、45分に同点弾を決め66分にピエール=エメリク・オーバメヤンのダメ押し点をアシスト。いずれも鮮やかなパスワークから生まれた、文字通りのビューティフルゴールだった。

 アーセナルはいま、公式戦10連勝と破竹の勢いで勝ち進めている。これは最終的に12連勝を記録した2012年10月以来の快挙で、二桁連勝はクラブ史上6度目の大型記録だ。しかも、直近の3試合で11ゴールと攻撃陣は波に乗っている。

 昨シーズン終盤の彼らにここまでの勢い、それからハツラツとした様子は見る影もなかった。それから約半年という短期間で、なぜ、かつてのような華やかさを取り戻しつつあるのか? それは"ヴェンゲル王朝"の崩壊とともにやってきたスペイン人指揮官による変革が、多分に影響している。

 アーセナルは、チームに黄金期をもたらしたアーセン・ヴェンゲルを昨シーズンの終了ともに退任。22年に及ぶ一時代に終止符を打った。そして、新たにクラブへ招聘したのが、当時、パリ・サンジェルマンをクビになっていたウナイ・エメリだった。

 就任当初、その手腕に懐疑的な目も向けられていた46歳のスペイン人指揮官だが、すぐにチームの改造に着手した。それが功を奏したのだ。英紙『The Sun』が、そのピッチ内外に渡るテコ入れについてまとめている。

 まず、エメリが選手たちに突き付けたのは、日々の練習から常にインテンシティーを保ち続けることだった。

 そのルールを選手たちに意識させ続けるためにエメリは、クラブの予算を割いて、練習場の隣にトレーニングジムを開設。これによってヴェンゲル時代よりも強度が高く、身体能力を向上させる意義のある練習が可能となり、今のアグレッシブなスタイルの構築に繋がった。

 さらに『The Sun』は、エメリが、対戦相手や自分たちの分析をコーチや選手たちを交えて徹底的に行なっていることも結果に繋がっていると綴り、「チーム内の戦術や情報の理解を高めたことでより成熟度が増した」と記した。

 そして、同紙が「最も重要な変化」として挙げたのが、「No more Mr Nice Guy(もう、お人好しはやめだ)」であった。次のようにレポートしている。

「これこそがヴェンゲル時代からの最も大きな変化だ。エメリは選手たちに何かを言う必要がある時により厳しく接するようにしている。彼は選手と監督の立場の違いを外部の人間に対して明確に見せつけている。その一方で選手たちの意見を聞き入れているのも確かだ。

 その結果、チーム全体のプロ意識が格段に高まった。とくにアーロン・ラムジーやメスト・エジルといった恥ずかしがり屋の中心選手たちが、率先して意見を言うようになったのは、ヴェンゲル時代には考えられないことだった」

 新任のスペイン人監督がほどこした変化の下で、かつての強さを取り戻しつつあるアーセナル。果たして、その勢いは本物なのか? 過密日程が重なり、負荷が増す年末にかけての試合で、真価が問われそうだ。
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