「イニエスタは別格のアート」悔しいけど同意せざるをえない

2018年10月23日 白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト)

思わずつぶやいてしまう選手が2人だけ。

10月20日の川崎戦でもイニエスタは別格の存在感を見せた。写真:サッカーダイジェスト写真部

「イニエスタは別格。アートだよ」
 
 約半年前の『ワールドサッカーダイジェスト』で、ジョルディ・キシャーノ記者(エル・パイス紙のバルセロナ番)はそう力説していた。
 
 正直に言えば僕は、アンドレス・イニエスタのファンでも、バルセロナのシンパでもない。子供の頃から「勝てば官軍負ければ賊軍」のカルチョ(イタリア・サッカー)に惚れていたから、何よりもスタイルを大事にして「美しく勝利せよ」をモットーとする彼らは、アイデンティティー的に相容れない存在だった。
 
 とはいえ仕事柄、バルサの試合は幾度となくスタジアムで取材してきた。そのたびに、「うわっ」、「うまっ」、「マジかよっ」と思わずつぶやいてしまう選手が2人だけいた。悔しいけれど。リオネル・メッシ、そしてイニエスタである。想像も付かないようなプレーを事もなげにやってのける彼らは、いつもまるで別次元でプレーしているかのようだった。
 
 10月20日の川崎フロンターレ戦、"ヴィッセル神戸のイニエスタ"を初めて生で観た。本人が「100%でやりたかった」と試合後に語った通り怪我明けでコンディションは十分ではなく、役割もバルサ時代の攻撃的MFではなく事実上の司令塔だった。神戸は3-5で逆転負けもしている。
 
 それでも僕はまた、不覚にも「うわっ」、「うまっ」、「マジかよっ」と何度もつぶやいていた。どんなに狭いスペースでも文字通り足にボールが吸い付くトラップ、予備動作だけで敵をはがすターン、相手が飛び込めない絶妙な間合いのキープ、寸分の狂いもない左右両足のキック、たまに本気になったときの一瞬の速さ、デッドスペースをいち早く察知する守備時のポジショニング――。すべてが異次元だった。
 
 やっぱりイニエスタは「誰よりもサッカーを知っていて、誰よりもサッカーが巧い選手」だった。それらをスペイン人記者に言わせると、「別格のアート」という表現になるのだろう。同意せざるをえない。悔しいけれど。
 
取材・文:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)

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