【現地発】ペレス会長が独断で白紙に戻した「マドリー大刷新計画」! 早速そのツケが回ってくることに

2018年10月20日 エル・パイス紙

新監督のロペテギは事態をろくに把握もせずに。

現場の声を無視したペレスの独断によって、マドリーは苦しい時期を抜け出せずにいる。(C)Getty Images

 レアル・マドリーが苦境に陥っている。

 選手たちが次々に不安を口にする中、ジュレン・ロペテギ監督はあくまで平静を装っている。しかし、それもあくまで表向きのポーズに過ぎない。クラブ内では、シンパのメディアを介してヴィニシウス・ジュニオールを補強の目玉に打ち出すキャンペーンを展開していた開幕前の時点から、すでに悲観論が噴出していた。

 プレシーズンの北米遠征中に幹部のひとりは、こうつぶやいていた。

「このチームは昨シーズン、あらゆる面で疲弊状態に陥っていた。長丁場のリーガでは不安定な戦いを繰り返し、勝者のメンタリティーを散発的にしか見せることができなかった。シーズンが変わって急にその体質が変わるとは思えない」。

 それを証拠に昨シーズン、リーガの優勝の可能性が消滅し、国王杯で格下のレガネス相手にベスト8敗退を喫した後、クラブ内ではオフにおけるチームの大刷新が検討され始めていた。

 その計画とは、クリスチアーノ・ロナウド、ガレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、ルカ・モドリッチ、イスコ、ルーカス・バスケスら10選手を高値で売却。その資金を元手に補強を敢行し、マルコ・アセンシオ、ラファエル・ヴァランヌ、マルセロ、セルヒオ・ラモス、ダニエル・カルバハル、カゼミーロ、トニ・クロースとともに新生マドリーを構築するという壮大なものだった。
 
 しかし、CL3連覇の達成がそうした青写真をすべて白紙に戻してしまった。フロレンティーノ・ペレス会長が、前人未踏の偉業を成し遂げたチームを解体することによるファンの反発に恐れをなしたのだ。

 チームの成長のためには大胆な血の入れ替えは不可欠と、ホセ・アンヘル・サンチェスGD(ゼネラルディレクター)が繰り返し主張しても考えを改めることはなく、最終的に現場責任者のジネディーヌ・ジダンに相談することなく独断で継続路線を決断。それが現有戦力で新シーズンを戦えないことを悟っていた前指揮官の電撃辞任を招く結果となった。

 その後、C・ロナウドの自主退団が重なっても、ベイル、アセンシオ、ベンゼマの成長に期待してペレスは頑なに動くことはなかった。そうした混乱下で、就任オファーに飛びつく形で、事態をろくに把握もせず後任監督に就任したのがロペテギだった。

 その後も土壇場で獲得したマリアーノ・ディアスを除き、ティボー・クルトワ、アルバロ・オドリオソラと、すでに不動のレギュラーが君臨している優先順位が高いとは言えないポジションを補強するのみで、大刷新は完全に宙に浮いたままチームは開幕を迎えた。

 0-1で敗れたのチャンピオンズ・リーグのCSKAモスクワ戦後、チームの苦境脱出のための秘策があるのかと問われたロペテギは、「これまで通り毎試合勝利を目指して全力で戦うだけ」と答えるのみだった。

 下り坂のベテラン、あるいはパフォーマンスが安定しない中堅と若手が中核を占め、賞味期限切れ感を露呈しつつあるチームが、C・ロナウドという絶対的な得点源までも失ってしまった。ロペテギは日増しに事態の深刻さを痛感し始めている。


文●ディエゴ・トーレス(エル・パイス紙/レアル・マドリー番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
 
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