初采配で見えた神戸のリージョ・スタイル。狙いはイニエスタの芸術ヒールも引き出した“リズム”

2018年10月07日 白井邦彦

イニエスタが投入され“方向性”はより明確になった

長崎戦でイニエスタが繰り出した華麗なヒールパス。このプレーに至る一連の流れがリージョ監督の狙いとするサッカーだ。(C) SOCCER DIGEST

 5連敗のうえに、ここ2試合は浦和に0−4、鹿島に0−5と大敗続きの神戸は、この長崎戦からフアン・マヌエル・リージョ監督が正式に指揮を執ることになった。リージョ監督と言えば、マンチェスター・シティを指揮するジョゼップ・グアルディオラ監督に影響を与えた人物として知られる戦術家。長崎の高木琢也監督も「正直、どういう形でくるのか、メンバーはどうか、掴みづらいところがあった」と警戒していた。
 
「ふたを開けると、本来(外に)張っている古橋(亨梧)や郷家(友太)がインサイドに入って、かなり近い位置でプレーする。(ルーカス)ポドルスキはフリーマンで、三田(啓貴)はちょっとアウトサイドにDFを引き出してタテを狙うシーンを作る。今までの神戸にはなかった形をやってきた」
 
 この日の神戸のシステムは4−4−2。中盤はダイヤモンド形で、底に藤田直之、右に郷家、左に三田、トップ下にポドルスキ。2トップは長身のウェリントンとスピードのある古橋を組み合わせた。
 
 試合序盤、長崎はその変化に対応しきれず、神戸が主導権を握った。だが、それは単にシステムを変えたから起きた現象ではなく、明らかに神戸のリズムが速くなったから起こったものである。リージョ監督の言葉を借りるなら「私たち自身でボールを回す、ボールを奪い返すリズムを非常に高く上げた。それによってチャンスもたくさん作れた」となる。
 
 別の言い方をすれば、保持率を気にし過ぎたポゼッションサッカーから、結果的に保持率が高くなるアクションサッカーへ。奪われてもすぐに奪い返すことで相手陣内に押し込む時間を長くし、常に相手にプレッシャーをかけた状態でポゼッションを高めるスタイル。バルセロナやマンチェスター・シティなどで見られるスタイルと言い換えてもいい。つまり、今までとは、アプローチの仕方が大きく変わったと言える。
 
 59分にアンドレス・イニエスタが投入されてからは、その方向性はより明確になった。69分のプレーはその象徴的な場面だ。
 
 ショートコーナーで一度はボールを失ったが、すぐに藤田が奪いに行き、素早いスローインのリスタートから最後はイニエスタがリフレクションを拾って藤田へ芸術的なヒールキックをみせたシーン。奪い返し、速く攻めるというリージョ監督の考えが垣間見られたシーンと言えるだろう。
 

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