【番記者通信】テベス獲得を見送った判断ミスの報い?|ミラン

2014年03月06日 レナート・マイザーニ

先行逃げ切りのプランは、先制点が奪えずに…。

テベス(左)にしてやられたミラン。2年前にこのストライカーの獲得を見送ったその判断ミスの報いだと、そんな嘆きも。 (C) Getty Images

 またしても、結果がついてこなかった。

 チャンピオンズ・リーグのアトレティコ・マドリー戦(2月19日の決勝トーナメント1回戦・第1レグ)と同様、ホームでユベントスを迎え撃ったミランは勝点を挙げられなかった(セリエA26節/0-2)。やはり内容が良かったのは自分たちで、前半にリードを奪っていてもおかしくない試合だったのに、だ。ユーベに決定力で凌駕され、クラレンス・セードルフ監督率いるチームは、手ぶらでピッチを後にした。

 またも運に見放された格好だが、敗戦の理由をそれだけで片付けるのは適当ではない。たしかに、とくに前半は多くの決定機を作った。とはいえ、サッカーはチャンスの数で勝敗が決まるものではない。有効打が勘案されるボクシングのような判定勝ちはないのだ。アトレティコやユーベを相手に良い試合ができるその力がありながら、それを勝利に結びつけられないのは、反省すべき何かが存在するということだ。

 クラブを取り巻く多くの人間は、こう考えている。あのときカルロス・テベス(現ユベントス)を獲らなかったその失敗の報いを受けているのだ、と。合意間近で突然交渉を打ち切った2年前の判断を嘆く向きは少なくない。テベスとアレッシャンドレ・パット(現サンパウロ)の二者択一で、クラブは調子を崩していた後者を選択したのだ。

皮肉にも、ユーベ戦で勝負を決する違いとなったのが、そのテベスだった。敵の、つまりこの場合はミランの2ライン(MFとDF)間で巧みにパスを引き出すこのアルゼンチン人は、ずっと脅威の的だった。68分にはトドメのゴールも奪われている。

 翻って、ミランの攻撃陣はどうか。テベスのような決定的な働きをすべきマリオ・バロテッリは違いを作り出せず、カカは及第点のパフォーマンスを保証はするものの、それ以上でもそれ以下でもない。試合を経るごとにサン・シーロ(ミランの本拠地)の支持を集めるアデル・ターラブトも、ユーベ戦は不発に終わった。本田圭祐は、期待に応えられていない。

 ミランはアトレティコ戦とユーベ戦の2試合で計28本のシュートを撃ち、そのうち12本を枠内に放った。だが、ユーベ戦のロスタイムにロビーニョがバーに当てた一本を別にすれば、決定的なシュートは前半に集中している。相手を圧倒するほどのインテンシティーは、詰まるところ45分間しか持続しないのだ。セードルフ監督は立ち上がりからアクセル全開で行けとチームにそう指示しているが、先行逃げ切りのそのプランは、先制点が奪えず、絵に描いた餅となっている。いつまでもこのままの状態ではいけないが……。

【記者】
Renato MAISANI
レナート・マルザーニ
1985年カターニャ生まれ。2006年から地元紙やWEB媒体でキャリアを積み、ミラノに軸足を移して活動の場を拡げる。現在はイタリア国内の著名ポータルサイトの編集員。国外サッカーにも通じ、地元紙でフランス・リーグのレビューを連載中だ。

【翻訳】
神尾光臣
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