【小宮良之の日本サッカー兵法書】 勢いに乗った者が勝ち! では、その「きっかけ」をどう掴むか!?

2018年09月14日 小宮良之

勢いを得ることはそのまま勝利に繋がる

25試合を終えたところで2位に9勝点差をつけて首位を走る広島。終盤戦に向け、優勝に向けて走り抜くための新たな「きっかけ」が欲しいところだ。写真は25節・鹿島アントラーズ戦での佐々木の決勝点。 写真:徳原隆元

 孫子曰く、「兵法の"勢"とは、集中力によって組織本来の力量を発揮することである」とある。
 
 これは、あらゆる戦いの常道と言えるだろう。勢いを得るには、猛烈な集中力がアクセルになる。逆説すれば、注意散漫、もしくは厭戦気分では、勝利を掴むことはおぼつかない。
 
 それゆえ、士気を高めて挑めるか、というのは勝敗を分ける要素になる。
 
 もののはずみとタイミングをとらえて活用できるか? 集団戦の基本は、まさにそこにあるだろう。流れに逆らうのは、どんな実力者でも苦労する。流れに乗ったら、(同じような実力なら)たいていの敵を打ち負かすことができるのだ。
 
 真剣勝負は、ふらふらした天秤のどちらかに重点をかけるように、一気に傾斜する。そして、どちらかに傾いた天秤を戻すのは、なかなか骨が折れる。勢いを得ることは、そのまま勝利に繋がるのだ。
 
 今シーズン、J1リーグで躍進するサンフレッチェ広島は、その「勢いを得し者」と言える。
 
 実力が拮抗したリーグで、独走することができたのは、流れを掴んだからに他ならない。勝利を重ねることで、集中力と同義の「自信」を増幅させてきた。その自信によって、選手はピッチで刮目し、勝負時をとらえて逃していない。
 
 MF青山敏弘のロングボールは冴え渡っている。DF佐々木翔は覚醒し、GK林卓人はビッグセーブを連発。また、FWパトリックは強烈な個によって、広島を牽引している。FWは他にも、ティーラシン、渡大生、工藤壮人らを対戦相手に応じて使えるのも、アドバンテージだろう。
 
 流れが変わるきっかけを点とすると、ひとつの法則も見える。
 
 広島の場合は、セットプレーが力点になっているのは間違いない。得点に繋げるだけの優秀なキッカーと、ストロングヘッダーを多く揃える。結果、得点の約30パーセントがセットプレーから。セットプレーを決めることによってイニシアチブを握り、守備を固めては敵を誘い込み、鋭いカウンターを放つ。
 
 点を線にすることにより、戦局を有利に動かせているのだ。

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