知る人ぞ知る長崎の逸材!中村慶太はJ1残留のキーマンになれるか

2018年09月02日 藤原裕久

長崎で最も得点の予感を感じさせる選手のひとり

チーム最多の6得点を挙げる中村。「僕らの年代が中心になって引っ張っていかないといけない」と中心選手としての自覚も強い。写真:徳原隆元

「ドリブルも打てる、シュートも打てる……あいつはヘディング以外のなんでも持ってるでしょ。僕にないすべてを持っている」
 
 V・ファーレン長崎の現役クラブ在籍年数最年長選手である前田悠佑が、そう言って向けた目線の先に立っていたのはMF中村慶太だった。現在、J1リーグ戦に19試合出場し、チーム最多タイの6ゴール。リーグ中断期間中に負った故障でピッチから遠ざかっていた中村だが、21節の広島戦で途中出場して6試合ぶりに復帰すると、23節からは先発で出場。J1残留へ向けて苦戦の続くチームの起爆剤として期待されている。
 
 高校・大学で華やかな実績をあげてきたわけではないため、一般的には知る人ぞ知る逸材だった中村だが、当時の長崎強化担当で、現在は強化部長を務める竹村栄哉氏は、そのプレーを見た瞬間に「こいつは凄い!」と確信したという。そして、「ゆっくりしていたら、他のクラブが獲得に動き始めてしまう」という想いから、中村に積極的なアプローチをかけて2015年の夏に特別指定、2016年の加入にこぎ着けることに成功した。
 
 中村の台頭に時間はかからなかった。突破力のあるドリブルや強烈なシュート、そして思いきりの良さを認められた中村は、2016年シーズンのJ2開幕戦でクラブ初となる大卒ルーキーの先発出場を飾ると、加入1年目に途中出場中心ながら、リーグ28試合に出場して2得点を記録。翌2017年シーズンも高木監督が「力やセンスはあるが、戦術面は得意ではない」と指摘する戦術理解の部分での課題から、残り時間20分程度での起用中心ではあったが、37試合で8得点をあげ、勝負を決めるジョーカーとしてJ1昇格に貢献した。
 
 そして課題であった戦術理解についても、「前はボールを持ったらドリブルでって思うことが多かったんですけど、今は周囲との連係や、周りの状況を考えるようにしています」と語るとおり、徐々に改善され、先発の一角を占める存在へと成長したのである。
 
 もちろん、まだまだ課題はある。連戦が続くとシュート精度が乱れる点は、苦しい時にチームを救う働きを求められるエースとなるには修正しなければいけない点だろう。戦術理解についても不安定さが顔を出すことが多い。それでも中村が、長崎で最も得点と歓喜の予感を感じさせる選手であることに疑う余地はない。
 
「プロになってもう3年。僕らの年代が中心になって引っ張っていかないといけない」
 
 そう語った開幕前の2月から約半年。今、チームは最下位という状況にありJ1の壁に苦しんではいるが、中村は残る試合へ向けてひるむ様子はない。
 
「ここまでの結果は変えられないんで、切り替えて次の試合へ準備をしていくしかない。僕らは未来しか変えられない。残る試合をプラスに変えたい」
 
 そう語る中村に漂う歓喜の予感は、いまだに消えてはいない。
 
取材・文●藤原裕久(フリーライター)
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