【アジア大会】メンバー最年少の21歳、長谷川唯が醸し出す今後のなでしこを託すに相応しい雰囲気

2018年09月01日 西森彰

準々決勝の北朝鮮戦では難易度の高いボレーを決めるが「簡単なシュートをもっとたくさん決めたい」

決勝戦では今ひとつ存在感を見せられなかったものの、長谷川は大会を通じて攻守両面で奮闘した。写真:早草紀子

 アメリカで強豪相手の「ネーションズ・トーナメント」を終えて半月後、今度は赤道直下のインドネシアで開催されるアジア大会へ。今夏のなでしこジャパンは、異なるシチュエーションの戦いを短期間に詰め込んだ。そこで主力のひとりとして活躍したのが、長谷川唯(日テレ・ベレーザ)だ。これまでの経験から、それぞれの戦いを次のようにイメージしていた。
 
「アジアのチームは、ヨーロッパやアメリカと比べて陣形をコンパクトにして、全体で組織的な守備をすることに長けています。それをかいくぐるには、日本人同士で戦う時のイメージ(が必要)。コンパクトにしていると逆サイドが空くという部分が、アジアでは多い。
 逆に欧米のチームとやると、スピードで負けてしまってカウンターがうまく行かないことなどもあります。そういう違いを理解し、アジアの時と、欧米の時で戦い方をしっかり分けていかないといけないなと感じています」
 
 ディフェンディングチャンピオン・北朝鮮との準々決勝では、これまで、自分が課題に挙げるだけでなく、周囲も期待してきた「試合を決めるゴール」を奪った。62分の価値ある追加点である。菅澤優衣香(浦和レッズレディース)と浮き球でのワンツー。最後は右腿(もも)に当てて落としたボールを、そのままボレー。難易度の高いシュートだった。
 
「大きな仕事をするという意味では、まだまだだと思います。あの北朝鮮戦のゴールは、たまたまの部分もあります。韓国戦でも一本、マイナスのボールを浮かしてしまうというところがありましたし、難しいシュートに限らず、簡単なシュートをもっとたくさん決めていきたいと思います」
 
 アジアで行なわれるトーナメントは、コンディションが整った欧米での世界大会とは、また別の難しさがついて回る。芝丈の違いは微妙なコントロールに狂いを生じさせ、熱帯、亜熱帯の気候が、身体を蝕んでいく。そんな戦いで、常に高いレベルをキープする長谷川唯は、見る者に安心感を与える。日程上の不利を抱えて臨んだ準決勝も、FWから中盤と運動量を求められた決勝もそうだった。
 
「(準決勝の韓国戦)後半、最後のところで日本の選手が全体的に疲れている中で、まだ走れるなというイメージがあったので、自分はサイドの選手ですが『中に入ってボールを受け、前線で守備をしよう』という意識はありました。みんなが、やや止まった状態の中で走っていたというイメージがあるのかも知れません。
 
 今大会、ハードワークという部分で、強い手応えがあるわけではありません。まだまだ、技術の部分も含めて、ミスを減らさなければいけません。そして、チーム全体の出来、試合の流れによって、自分で仕掛けるか、前につなぐか、という部分の判断がまだまだ。もっとチーム全体のことを気にしながら、プレーできるようにしたいと思います」
 

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