トーレスがJ初ゴールに込めた想い「我々はチームとして良くなっている。これからもゴールを挙げられる」

2018年08月29日 松岡蒼大

G大阪との直接対決を制したが、予断を許さない状況はこれからも続く

リーグ戦初ゴールを決めたF・トーレスは、J1残留に向けて決意を新たにした。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ついに真価を発揮した。今年7月にサガン鳥栖に加入したフェルナンド・トーレスが、リーグ戦8試合目の出場で初得点。金崎夢生の移籍後初得点と小野裕二のゴールもお膳立てし、降格圏に沈むG大阪との大事な一戦のヒーローとなった。
 
 ストライカーとしての魅力が存分に詰まったゴールシーンだった。86分、右サイドでボールを持った福田晃斗が駆け上がる間、右に位置していたF・トーレスはゴール前中央へ一直線にダッシュ。「パッと見たらスペースがあって、フェルナンドもそこを狙っているなと感じた」(福田)と柔らかいクロスを供給。F・トーレスは倒れ込みながら頭で流し込んだ。
 
「あのシーンで一番良かったのは(福田)晃斗のアシスト。(金崎)夢生がニアに入っていたので、私はファーに行ったほうがいいと思った」
 
 デビュー戦となった7月22日のベガルタ仙台戦から約1か月後に味わった歓喜の瞬間。おなじみの両手で弓を射るゴールパフォーマンスを披露し、チームメートと抱き合って喜びを共有した。
 
 今季前半の鳥栖はビクトル・イバルボ、チョ・ドンゴンの負傷離脱などもあり、得点力不足に悩まされた。そこでF・トーレス、鹿島から元日本代表の金崎をチームに迎え、転換を図った。シーズン残り5か月の中でいち早いフィットが求められる状況下、当初は「まだ探り探りでやっているので、時間が必要」(原川力)という意見も聞こえた。
 
 それでも、マッシモ・フィッカデンティ監督が「日頃のトレーニングもひと一倍しっかりやっているし、笑顔でポジティブにトレーニングできる姿勢が彼の特徴」と語るように、サッカーに対するストイックな姿勢がチーム内に伝播。G大阪戦の48分に小野が決めたミドルシュートの前には、F・トーレスが優しくパスし、59分には一手先を読んだ横パスで金崎の会心の一撃を生んだ。
 
 リーグ戦残り10試合の現時点で16位。11位の柏レイソルを勝点4差で追う位置でもあるが、同じ勝点4差で最下位のV・ファーレン長崎から追われる立場で、予断を許さない状況はこれからも続いていく。「点が入らなかったり、勝てなかったりしても、自分たちがネガティブにならずに続けてきた結果が出ている」という小野の言葉通り、残留争いの直接対決では貴重な結果をもたらした。
 
「我々はチームでよくなっている。しっかりと練習を積み重ねているので、これからもいいゴールを挙げられると思う」とF・トーレス。端正な表情で語ったこの言葉には、さらなる逆襲に向けた強い覚悟がにじみ出ていた。
 
取材・文●松岡蒼大
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