「10年は頑張ろう」 盟友との約束のシーズンに実現したマッチアップ。等々力のピッチで両者は何を感じたか?

2018年08月24日 林 遼平

「28歳にして15年ぐらい前に会った人とまた対戦できるのは感慨深い」(齋藤) 「僕と齋藤学でプロに入った時に『10年は頑張ろう』と話をしていた」(端戸)

齋藤(左)と端戸(右)の盟友同士が等々力のピッチで火花を散らした天皇杯4回戦。区切りの10年目にマッチアップが実現した。(C) SOCCER DIGEST

 川崎フロンターレと湘南ベルマーレという神奈川の両雄が等々力陸上競技場で激突した天皇杯4回戦のピッチで、久しぶりの再会に火花を散らしていた男たちが存在した。
 
 齋藤学と端戸仁。小学校時代から共にプレーし、横浜F・マリノスの下部組織を経てプロの世界に飛び込んだふたり。そんな盟友同士のプロ10年目の対峙は、互いに左サイドと右シャドーのポジションに配置されたこともあって、正面からぶつかり合う激しいマッチアップとなった。
 
 シーズン開幕前、湘南の端戸は、川崎に入団した齋藤との対戦を心待ちにしていた。当時は齋藤が大怪我を負って長期離脱中だったが、湘南は2年ぶりにJ1昇格。J1にたどり着いたことで、齋藤の怪我さえ治れば対戦する可能性が広がると喜んでいた。
 
「今年、プロ10年目の節目の年なんですけど、僕と齋藤学でプロに入った時に『10年は頑張ろう』という話をしていたんです。その10年目を迎えられたのは素直に嬉しいし、学の存在はすごくサッカー人生において大きくて、今年は彼と対戦する機会もあるのでぜひ勝ちたいですね」
 
 ただ、開幕から約半年。互いにチームの主力になり切れていない現実があった。怪我をしながらも移籍を決断した齋藤は、スタートが遅れたこともあってまだまだ川崎のスタイルに順応している最中。端戸は小さな怪我もあって、なかなかスタメンの座を奪うことができていなかった。だからこそ、先月のリーグ戦を前に語った齋藤の言葉は正直だった。
 
「プロになって同じチームで過ごした時間はそんなに多くないけど、やっぱり対戦できればいい。小学校の選抜から同じチームでずっとやってきて、28歳にして15年ぐらい前に会った人とまた対戦できるのは感慨深いです。でも正直な話、それどころではない。オレもメンバーに入れるか分からないし、最近の試合を見るに向こうもそうだから。まずは自分の結果を残さないと」
 
 結果的に台風の影響もあって試合は延期となったのだが、あのまま開催されていれば、両者が対峙する可能性は低かっただろう。それほどまでに両者の立ち位置は難しいところにあったと言っても過言ではない。
 
 しかし、幸運だったのは試合が延期となり、さらに天皇杯の対戦相手にも決まったこと。今年中に相まみえるチャンスが増え、先発入りに向けてアピールを続けていた。
 
 迎えた天皇杯4回戦。ピッチ上にはふたりの姿があった。ついに訪れた盟友との直接対決。負けられない思いがぶつかり合った。
 

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