「健全な競争が働く」トーレスの初ゴールを独特な表現で祝福した権田修一の真意は?

2018年08月23日 五十嵐創(サッカーダイジェストWEB)

「今日はトヨくん(豊田陽平)が相当良かったし、あれで次の試合に出られないのが当たり前になっちゃいけない」

権田は「いつも出てないメンバーでやっても、これだけできるんだというのを見せられたのはチームにプラス」と強調した。写真:徳原隆元

 ヴィッセル神戸をホームに迎え撃った天皇杯4回戦で、サガン鳥栖は3-0の快勝を収めた。全員がハードワークして神戸の攻撃を撥ね返しつつ、37分に左サイドからのクロスでオウンゴールを誘い、50分には高橋義希の正確なフィードから、安在和樹が追加点を挙げる。さらに84分に途中出場のフェルナンド・トーレスが来日初ゴールを決めるという最高の形での勝利だ。
 
 大物助っ人の待望の一発は、チームメイトやファン・サポーターを熱狂の渦に巻き込んだ。もちろん、本人にとっても格別の喜びだっただろう。ただ、このトーレスのゴールに関して、面白い発言をした選手がいる。鳥栖のGK権田修一だ。
 
「彼にとって良かったと思います。この前の試合にしても決定機を外していましたからね。別にフェルナンドが出るのが保証されているわけじゃないですけど、試合に出た時にああやって点を取ってくれると普通に出られますよね」
 
 権田はなにも難癖をつけているわけではない。もちろん、トーレスのゴールを祝福しているが、同時にリーグ戦で16位に低迷するチームの現状を踏まえて発言しているのだ。
 
「今日はトヨくん(豊田陽平)が相当良かったし、あれで次の試合に出られないのが当たり前になっちゃいけない。そこに健全な競争がないと」
 
 リーグ戦ではトーレスと金崎夢生が先発を務め、この日の神戸戦でスタメンを張った豊田や田川亨介は基本的にベンチスタート。しかし、普段は出場機会が少ない選手たちがチャンスを与えられた天皇杯で結果が出たのだから、「いつも出てないメンバーでやっても、これだけできるんだというのを見せられたのはチームにプラス」と権田が言うのも当然だろう。そのうえで、新エースが「FWとしてのひとつの結果」(権田)を残したこの勝利は、チームにとって申し分ないものになったはずだ。
 
「健全な競争がないチームは強くはなれない」
 
 力強くそう語った権田は、どこまでもストイックに勝利だけを見つめている。たとえ、ワールドカップやEUROを制したスーパースターであっても、あくまでチームの歯車のひとつ。その客観的でシビアな視点は、残留争いの渦中にあるチームがさらに強固な一枚岩になるうえで、大きな意味を持ってきそうだ。

取材・文●五十嵐創(サッカーダイジェストWEB)
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