9年ぶりのリーグ4連敗…苦境を救うのは”柏らしさ”を取り戻すエレガントな司令塔だ

2018年08月03日 鈴木潤

深刻な得点力不足に悩まされるが…。

手塚は深刻な得点力不足を解消できるだろうか。写真:茂木あきら( サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ19節]柏0-2湘南/8月1日(水)/三協F柏

 降格した2009年以来、9年ぶりのリーグ戦4連敗。しかも、そのうち3試合が無得点と、柏は深刻な得点力不足に悩まされている。

 19節の湘南戦でもミスから開始2分に失点を許すと、勝てない焦りも相まってシュート、パス、クロスなど最後の部分で精度を欠いた。湘南を押し込み、チャンスを作るものの、最後までネットを揺らすことはできなかった。
 
 だが、同じく完封負けを喫した16節のFC東京戦(●0-1)、18節の神戸戦(●0-1)と異なり、少なくとも湘南戦では得点の可能性は感じられた。それまでの試合では、柏が持つ本来の特徴でもあるビルドアップが円滑に進まず、攻撃にリズムが生まれなかったが、その課題を解消させるために加藤望監督は手塚康平を先発で起用した。手塚にとっては6試合ぶり、加藤体制では初のスタメンだった。

「自分が最終ラインに降り、はっきり後ろを3枚にして、相手のプレッシャーをかけられないようにしたので、ビルドアップはそんなに手こずることなくできました」
 
 手塚のこの言葉通り、最終ラインまで降りてパスの発信源として背番号17が頻繁にボールに絡み、手詰まりになったビルドアップは一転、テンポと流れが生み出された。手塚を起点にしたパスワークで湘南のプレッシャーをかわし、それによって空いたスペースを的確に突いていけるようになった。
「攻撃のテンポが上がらない」
「選手同士の距離が遠い」
「攻撃イメージの共有ができていない」
 
 それまでの3連敗では、試合後に柏の各選手からそんな反省の弁が聞かれていたが、「距離感が良かったので、うまく掻い潜れました。その崩しを何回もできるようになれば自ずとチャンスも増えてくると思います」と手塚が語ったとおり、抱えていた問題点が解消の兆しを見せた点は、敗戦の中の前向きな要素である。
 
 手塚は昨年8月の右膝前十字靭帯損傷、右膝外側半月板損傷という大ケガから今年の春に復帰を果たした。怪我は完治したが、得意のミドルレンジのパス精度には微妙な誤差が生じるのか、湘南戦の自分自身のパフォーマンスを振り返り、「何度か自分からチャレンジのパスを出してミスがあった」と自らの課題にも言及。そしてさらにこう付け加えた。「でもチャレンジしなければ得点にはつながらないので、そこは精度を高めていきたい」
 
 思えば、昨季もリーグ序盤戦に3連敗があった。茨田陽生、秋野央樹という2人のパサーの移籍によってビルドアップの起点を作る司令塔の不在がその原因のひとつだった。だがその苦しい状況を打破するきっかけとなったのが手塚の台頭であり、優れたセンスと高精度のパスを兼備するエレガントなレフティーがスタメンに定着すると、チームは上昇気流に乗って破竹のリーグ8連勝を記録した。

 結果的に湘南に敗れ、4連敗と苦しい状況下にあるのは変わらない。ただ、大怪我を克服し、調子を上げてきた手塚のスタメン復帰は、もがき苦しむ柏に差し込んだわずかな光明である。

取材・文●鈴木 潤(フリージャーナリスト)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事