「日本代表よ、テーブルをひっくり返すんだ!」仏誌編集長がサムライブルーの“これから”に熱き提言!

2018年07月21日 レミー・ラコンブ(フランス・フットボール誌編集長)

敵をリスペクトしすぎない姿がそこにあった

ラコンブ編集長はベルギー戦に大きな価値を見出す。それは唯一の勝ち星を挙げたコロンビア戦を大きく上回るものだと。(C)REUTERS/AFLO

 ロシア・ワールドカップを戦った日本代表において、もし「1試合だけ記憶にとどめよ」と言われれば、それはベルギー戦になるかもしれない。たとえ悪い結末に終わったとしても、あの試合こそが日本代表の未来を建設するうえで役に立つ、大きな礎になると考えるからだ。
 
勝利したコロンビア戦より、ずっと価値がある。コロンビア戦ではカルロス・サンチェスが早々と退場になり、あまりにも有利な状況に依拠しての勝利だった。それに対してベスト8を懸けたベルギー戦では、敵をリスペクトしすぎない日本の選手たちの姿を目撃できた。もちろん良い意味で、だ。
 
 つまり、怯えず、ビッグタレントが揃っていてもそのネームバリューなど気にもかけず、ヨーロッパの強豪クラブで活躍する彼らのステータスや存在感にも頭を悩ませない。さらには自分を誤魔化して目をそらすこともおじけづくこともなく、いわば「真正面から相手の目を見てモノを言う」戦いをしたからだ。


 
 私はいまでも、2002年日韓ワールドカップのあとにフィリップ・トルシエがつぶやいた言葉を、よく覚えている。
 
 彼は当時、日本代表のメンバーがあまりにも対戦国の選手たちをリスペクトしすぎる点を嘆き、巨大なディシプリンで自分自身をがんじがらめにしていることに苦言を呈していた。トルシエは、もっと自分たちの力に自信を持ち、厳格な指示を待ってそれに従おうとするばかりではなく、ときには自分で考えて即興的な判断ができるようになってほしかった、とも語っていた。
 
 大きなことをやってのけるには、自分に付与された役割や機能を大胆に突き破る術を知らなければならない。つまりは「テーブルをひっくり返してみせる」必要があるのだ。あのベルギー戦で日本の選手たちは、もう少しでそれができそうだった。実に惜しかったのだ。
 
 彼らは嵌めていたタガをみずからの手で外し、持てる力を存分に吐き出して強敵に立ち向かった。ビッグチームでもひっくり返し得る自分たちの姿を目にしたのだ。もちろん、ゲームの最終盤に聡明さを欠いてしまったし、戦術的成熟もやや不足していた。この点は、監督が選手たちにもたらしてやるべきものだった。だが私は、あのような形でサムライブルーが自己を解放する様を、これまで一度も見たことがなかった。そう、初めて見たのだ。
 

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