【指揮官コラム】三浦泰年の『情熱地泰』|F・トーレス獲得以上に衝撃を受けた鳥栖ユースの強さ

2018年07月18日 サッカーダイジェストWeb編集部

鳥栖ユースが大迫の母校・鹿児島城西高に15-1という衝撃のスコアで大勝

元スペイン代表のフェルナンド・トーレスが鳥栖に加入。イニエスタに続くビッグディールが成立した。(C) J.LEAGUE PHOTOS

「フェルナンド・トーレス サガン鳥栖決定」
 凄いニュースが飛び込んだ。
 
 噂が先行して消滅、破談という方向に傾きかけていたとしたら、この「F・トーレス鳥栖入り」は、鳥栖にとって最高のニュースとなったに違いない。
 
 そして同時に、この大物入りと同じか同等以上のインパクトを持つサガン鳥栖絡みのニュースが鹿児島に飛び込んだ。
 
 それは大袈裟ではない。鹿児島を代表する高校サッカー部の名門のひとつ、鹿児島城西高校とサガン鳥栖ユースのプリンスリーグの結果だ。
 
 鹿児島城西は今年のインターハイ鹿児島県予選では決勝で神村学園に敗れ準優勝。鹿児島では毎年、神村、城西、鹿実の3強が代表校の座を争っている。
 
 その一角である鹿児島城西が鳥栖ユースに15-1で負けたという。
 
 それをコーチから聞かされ、これは城西が弱いというより鳥栖ユースが良いのではないか?と興味を持った。
 
 城西といえばロシア・ワールドカップ日本代表で活躍した大迫勇也の母校だ。この時期の高校生たちのモチベーションは半端ないはずだ。
 
 その城西から15点を奪った鳥栖ユース。もちろん、J1に属するトップチームがビッグネームを獲得することも素晴らしいことではあるが、下部組織の快進撃はもっと素晴らしい。
 
 高校サッカー文化が根強く定着している九州地域で、Jクラブユースとして鳥栖の下部組織はしっかりと結果を残している。
 
 まだそのサッカーを見たことはないのだが、すごく興味がある話だ。きっと良いサッカーをやるのであろう。
 
 思えば、7年前の2011年に鳥栖はJ2からJ1へ昇格。当時、残り3節という状況で勝てば鳥栖がJ1昇格。僕はその時、対戦相手であるギラヴァンツ北九州の監督をやっており、アウェーで鳥栖と戦った。
 
 結果は、3-2の逆転勝ちで目の前での昇格を阻止。
 
 内容的にも前年度、1勝15ポイントしか挙げられなかった北九州が、鳥栖との差を縮めたシーズンでもあった。
 
 その後、鳥栖はリーグを競り勝ちJ1昇格。それから一度も降格することなくJ1の厳しいリーグを戦い抜いている。
 
 そして市民、県民に夢を売るクラブに成長し、F・トーレスを獲得。
 
 それだけでなく大事な下部組織、育成組織もしっかり成長させ、その結果が鹿児島城西との15-1というスコアに表われたのであろう。
 
 下部の充実、成長は簡単ではない。時間もかかるし手間もかかる。ここまで発展させるには、きっと数多くの人が育成に携わり、努力したに違いない。
 
 この時期に、トーレスの話題以上に鳥栖というチームのポテンシャルを感じた出来事なのである。
 
 当時、互角に戦った北九州はJ3リーグへ。鳥栖とリーグ終盤まで昇格を争った徳島はその後、一度はJ1の座を勝ち取ったが1年でJ2へ戻り、現在も苦しんでいる。
 
 そしてJ1に残留することも簡単ではない。2011年に昇格し、2012年シーズンから7年の間にガンバも降格を経験、J1を引っ張って来た磐田、お隣の清水、そして名古屋とオリジナル10やビッグネームのクラブが何処も降格を経験している。
 
 そんな厳しいリーグでしっかりJ1に根を張り、鳥栖はいまや九州を代表するクラブへと成長を遂げている。そして今回のF・トーレスの獲得によって目標地を高く設定して戦おうとしているのであろう。
 

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