「リードを許したのは9分間だけだ」フランス誌編集長がレ・ブルー戴冠の“5大要素”に迫る!

2018年07月17日 レミー・ラコンブ(フランス・フットボール誌編集長)

アタッカーたちが守り、ディフェンダーたちがゴールする

このパバールの美弾などでアルゼンチンとの撃ち合いを制し、波に乗ったレ・ブルー。大会全体を通してリードを許したのはわずか「9分間」だった。(C)Getty Images

 レ・ブルー(フランス代表の愛称)の優勝は、ひとりの男の勝利であった。
 
 指揮官、ディディエ・デシャンである。その運命は尋常ではない。なにせ選手としてワールドチャンピオンに輝き、今度は監督としてもワールドチャンピオンに輝いたのだから。デシャンは終始一貫して、「勝利だけが美しいのだ」と繰り返してきた。
 
 1990年代にユベントスでプレーした際に深く刻みつけたのが、その概念だった。個々のタレント性よりもコレクティフ(集団=グループ精神)を優先するという、イタリアの勝利の文化を吸収し、栄養にしたのだ。
 
 デシャンはタレント性だけではワールドカップは獲れない、そのことを熟知していた。勇猛さ、連帯心、ディシプリン、しつこく敵をいじめ続ける激しさといった、他のさまざまな美徳が必要であることを。今回の巨大な成功は、このフィロゾフィー(哲学)を自分の選手たちに共有させた点にあった、そう断言できるだろう。

 
 フランスの優勝はまた、ひとつのチームの勝利でもある。
 
 単なるボールポセッションはどこにも導いてくれないことを理解し、ワールドカップはまずもってソリッドな守備力で勝ち取るものだと理解した。そんなチームの勝利だ。
 
 ターニングポイントはラウンド・オブ16のアルゼンチン戦だった。この試合でチームは、低いブロックで守りながら、狙い澄ましたカウンターを炸裂させ、苛烈な撃ち合いを制した。ここで自信がきわめて大きい。準決勝のベルギー戦では相手にゲームを支配され、次いで決勝のクロアチア戦でも劣勢となる時間帯が多かったが、それでも決して団結は崩れず、その気配さえ微塵も感じさせなかったのだ。
 
 フランスはアタッカーたちが守り、ディフェンダーたちがゴールする――まさに、そんなチームだったのである。バンジャマン・パバールはアルゼンチン戦で、ラファエル・ヴァランヌはウルグアイ戦で、サミュエル・ウンティティはベルギー戦で、それぞれゴールしてみせた。
 
 終わってみれば、フランスが今大会で対戦相手にリードを許したのは、たった9分間のみ。アルゼンチン戦の48分から57分までの、ほんの短い時間だった。
 

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