【W杯 今日は何の日?】7月1日「去りゆく英雄が最強軍団を翻弄」

2014年07月01日 サッカーダイジェストWeb編集部

最強ブラジルが突如覚醒したフランスの前に完敗を喫した夜。

大会序盤までは「引き際を間違えた選手」と酷評されたジダンだが、ここから大会の主役として花道を飾ることになった。 (C) Getty Images

 2006年7月1日、ドイツ大会の準々決勝ではブラジルとフランスが対戦。世界中がこのフランクフルトでの一戦に注目した。最強軍団と、この大会での現役引退を表明している偉大な選手が対峙したからだ。
 
 ロナウジーニョ、カカ、ロビーニョ、ロナウジーニョ、アドリアーノといったそうそうたる攻撃のタレントを擁し、優勝候補の筆頭として大会に臨んだブラジルは、しかし決勝トーナメント1回戦まで全ての試合に勝ったとはいえ、内容的にはいまひとつで、いつチームとして噛み合うのか、期待と不安をもって世界中が関心を寄せ続けていた。
 
 一方、英雄ジネディーヌ・ジダンにとって現役最後の舞台となるワールドカップで、フランスは低調なスタートを切る。スイス、韓国に引き分けて絶体絶命の状態に追い込まれ、最終戦でようやく勝利して何とかグループリーグを突破。この最後のトーゴ戦でジダンが累積警告で出場停止だったのは何とも皮肉な話である。
 
 しかし、この苦しみがフランスを変えた。決勝トーナメント1回戦でブラジルがガーナを3-0で勝利するも、いまだチームとしては不安定だったのに対し、フランスは好調スペイン相手にかつての王者らしい試合運びで3-1と予想外の快勝を飾ったのである。ジダンは司令塔として輝き、守備陣は堅守を披露。中盤ではパトリック・ヴィエラが走り回り、新鋭フランク・リベリの技は冴え渡る。そして、ティエリ・アンリは前線でスペイン守備陣を翻弄し続けた。
 
準々決勝を前に多くの人々が描いた「世界最強チームと落日の元世界王者の対決」の構図は、すぐに崩れた。ブラジルはロナウジーニョをFWに置くというカルロス・アルベルト・パレイラ監督の秘策が失敗し、攻撃陣に連動性が見られず、タレントたちは皆、孤立。フランス守備陣の絶妙な間合いに苦しみ、ボール支配すらままならなかった。
 
 こうしてブラジルが失ったボールは、すぐにジダンに集められる。目覚めた天才は運動量こそないものの、巧みなパスと時折見せるマルセイユルーレットといった往年の神業で相手守備陣を翻弄。チームメイトは高い運動量と効果的な動きを見せ、フランスは徐々にゴールに迫っていった。
 
 そして57分、左サイドからのFKをジダンが蹴る。マークの定まらないブラジル守備陣の裏を突いてファーサイドにフリーで待ち受けたアンリが、ダイレクトボレーでブラジルゴールの天井に突き刺した。貴重な先制点。この日のフランスにとっては、もうこの1点で十分だった。
 
 フランスの巧みな守備と効率の良い攻撃が光った一戦。全ての選手が「プラン通り」と満足気なフランスに対し、優勝しか眼中になかったブラジルは茫然自失のままピッチを後にする。ここまでワールドカップでは1勝1分け1敗と五分の通算成績だったこのカードでフランスは勝ち越しに成功し、98年フランス大会決勝の雪辱を狙っていたブラジルを返り討ちにしてみせた。
 
 そして何よりも、フランスの選手たちが、スタッフが、国民が、そして世界のサッカーファンが嬉しかったのは、ジダンの勇姿をまだこれから先も見られるということだった。
 
 
◆7月1日に行なわれた過去のW杯の試合
 
1950年ブラジル大会
「1次リーグ」
ブラジル 2-0 ユーゴスラビア
 
1982年スペイン大会
「2次リーグ」
ベルギー 0-1 ソ連
オーストリア 2-2 北アイルランド
 
1990年イタリア大会
「準々決勝」
西ドイツ 1-0 チェコスロバキア
イングランド 3(延長)2 カメルーン
 
2006年ドイツ大会
「準々決勝」
イングランド 0(1PK3)0 ポルトガル
ブラジル 0-1 フランス
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