原口元気が殻を破ったベルギー戦の一発。もはや献身性だけが取り柄ではない【西野ジャパン23戦士のストーリー#6】

2018年07月12日 河治良幸

ベルギーとの真剣勝負は、さらなる成長の糧となる

得点力を課題に掲げていた原口にとって、あのベルギー戦での一発は殻を破るきっかけになるかもしれない。(C)Getty Images

 ハリルホジッチ時代から主力に定着していた原口の果たすべき仕事は、政権交代後も基本的に変わらない。ハードワークと攻守両面でのデュエル――。彼にとってはもはや当たり前の仕事だが、その当たり前がチームにとって大きな助けとなった。
 
 ボランチの柴﨑を起点に、長友、香川、乾が絡む左サイドからの崩しが多い西野ジャパンにあって、原口は精力的なオフ・ザ・ボールの動きで右サイドを活性化するとともに、機を見てゴール前に侵入。右サイドバックの酒井宏が縦に抜けるスペースを作るプレーもお手の物だ。
 
 実際、今大会でも乾の速いクロスに逆サイドから斜めに走り込んで合わせたり、相手DFの裏に抜けて酒井宏の球足の長いスルーパスを引き出したりするシーンが見られた。さらに守備の局面では、高い位置からのプレッシングに加え、持ち前の走力を活かした素早い帰陣でも、何度となくピンチの芽を摘んでいる。そうした一つひとつの献身的なプレーが、チームの動力源となっていたのは間違いない。
 
 とりわけ、2-1とリードしたコロンビア戦の終盤、粘り強いディフェンスで相手の突破を食い止めた場面は、まさに原口の真骨頂であっただろう。
 
 ただし、反省材料もある。セネガル戦で失点につながったバックヘッドのクリアは致し方ないが、フィニッシュの精度を欠くなど、アタッカーとして決定機に絡む回数が少なかったことは本人も強く自覚しているはずだ。
 
 ポーランドに敗れながら決勝トーナメント進出を決めた後、この日はベンチで戦況を見守った原口はこう話した。
 
「この次を勝つというのは僕らの目標だったし、負けたけど、ここで終わるよりは次につながって良かった」
 
 貴重な先制点を決めたベルギーとの真剣勝負は、原口にとっても日本サッカーにとっても、さらなる成長を遂げるうえでの大きな糧となるだろう。ただ、もちろんここがキャリアの終着点ではない。もうワンランク上を目指すため、これからいかにプレークオリティを高めていくか。原口はすでに「次」を見据えている。
 
取材・文●河治良幸
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