ナイーブさが消えた香川真司に「集大成」という言葉は似合わない【西野ジャパン23戦士のストーリー#1】

2018年07月11日 サッカーダイジェストWeb編集部

本田からトップ下のレギュラーを奪って躍動

日の丸の10番を背負ってチームを牽引した香川。コロンビア戦の先制点が大会の流れを作った。(C)Getty Images

 人知れず紡いできた苦悩と努力は、もはやひとつの物語だ。14年のブラジル・ワールドカップでは、グループリーグ敗退が決まった瞬間、ベンチの横で芝生に突っ伏した。翌年のアジアカップ準々決勝では、PK戦での失敗に涙ぐんだ。どこか少年のようなナイーブさを残していた香川。だが、今の彼にそんな面影はない。
 
 コロンビアとの初戦。大迫のシュートがGKにセーブされて撥ね返ったボールを、迷わずダイレクトで叩く――。ボールはエリア内にいたC・サンチェスの手に当たり、ハンドの判定。開始わずか3分で、コロンビアにレッドカードを、日本にPKをもたらした香川のシュートが、グループリーグ突破への確かな道筋を作ったと言っていい。自らPKのキッカーを務め、冷静にワールドカップ初ゴール。ボールをセットする仕草から、以前のように不安が滲み出ることはなかった。
 
 すべての淵源は4年前だ。
 
「ブラジルがあったから、このロシアがある。あの経験はすべてがプラス。それを経て、ここにいる」
 
 チームに白星はなく、自身もノーゴール。大会後、ひとりで自宅にいる時、悔しさに胸が焼かれた。
 
 クラブチームでの躍動は、なかなか代表に還元されなかった。ロシアへの切符を勝ち取った昨年8月のオーストラリア戦はベンチを温め、11月と今年3月の欧州遠征は招集外。それでもスタジアムに足を運んだのは、来るべき時のためだったのだろう。
 
 変化が見てとれたのは、本大会前のオーストリア合宿だ。2月に左足首を痛め、実戦感覚が薄らいだまま登録メンバー入り。昔ならナーバスな言動が目立ったであろう香川が、これまでになく強気な発言を繰り返した。
 
「プレッシャーはあったし、むしろかけるようにしていた」
 
 あえて自らを追い込んだのは、逞しさが芽生えた証だ。そして、本番前最後の強化試合となったパラグアイ戦で3ゴールに絡む活躍を披露し、本田からトップ下のポジションを奪ったのだ。この4年で、サッカー選手として以上に、人として長じた軌跡と言えた。
 
「自分が結果を出して、チームを勝利に導かないと」
 
 日本を救ったと誇れる試合は数えるほど。だから、ワールドカップ初得点にもそれほど喜びを爆発させなかった。
 
「そういうのは年月が経ってから浸ればいいし、今は必要ない。自信を力に変えることだけを考えたい」
 
 大会前に使った「集大成」なんて言葉は、まだ香川には早い。
 
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